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中田翔とオリンピックと体育会系

日本社会はスポーツ全体を「甘やかして」きたのではないか

赤木智弘 フリーライター

 長い間日本ハムファイターズの主砲を務め、中心的存在だったプロ野球選手の中田翔選手が読売ジャイアンツに電撃移籍。そして試合に出場したことが波紋を呼んでいる。

 中田選手は8月11日に後輩のチームメイトに対して暴力を振るったことが判明。大事には至らなかったものの、相手は脳しんとうを起こしていたとの証言もある。

 この件に対して日ハムは中田選手に対して1軍2軍共に無期限の出場停止処分を課したことを発表。少なくとも中田選手の今シーズンの活躍は絶望的な状況となっていた。

中田もプロ野球も甘やかされ過ぎではないか

東京ドームでの練習後、握手して記念撮影に応じる中田翔(右)と原辰徳監督=2021年8月20日、東京都文京区

 ところが8月20日。日ハムと読売の間で中田選手のトレードが成立。翌21日には早速の1軍登録。翌々日の22日にはスタメンとして5番ファーストに起用されると、2ランホームランを放つなど、日ハムでの無期限出場停止処分など無かったかのような活躍を見せたのである。

 この一連の出来事に対して、もちろん中田選手の活躍を喜ぶ野球ファンもいるのだが、一方で無期限出場停止処分を食らうような暴力問題を起こしながら、トレード即一軍で起用という極めて甘い球界の対応に戸惑う野球ファンも多い。

 かくいう僕も今回の一連の流れに対しては非常にいらだちを感じている。有り体に言えば甘やかしが過ぎるのではないかと思う。

 中田選手と言えば日本球界を代表するスラッガーであることは間違いない。これまでの実績も申し分ない。しかしその一方で中田選手といえば「やんちゃ」さも有名だった。今回の問題も親しい後輩をイジっていたがそれが行きすぎたのではないかとみられている。

 とはいえすでに32歳の選手が「やんちゃで人を殴ってしまった」というのは社会通念として許されることではない。少なくとも一般社会であれば警察沙汰になってもおかしくない問題である。

 そのような問題に対して無期限出場停止処分という球界内の対応は決して間違ってはいるとは言えなかったのだが、トレードの結果「別球団に行ったから処分は無かったことに」というのは、中田選手当人にとっても、球界にとってもご都合主義的過ぎではないだろうか。

お笑い業界の厳しさとのギャップ

 お笑いタレントの有吉弘行氏は、この事件に対して、「(TKO)木下さん、(雨上がり決死隊)宮迫さんも、すぐ太田プロに来ればよかった。中田翔システムだったら出られる」との旨を発言し、有吉氏が属するお笑い業界の厳しさと、野球界の甘さというギャップを指摘した(2021年8月22日付東スポWeb)。

 宮迫氏は問題発覚以前はバラエティ番組はもちろん、俳優などとしても活躍し、テレビに欠かせない存在だった。そうした立ち位置はお笑い界の4番バッターと言っても過言ではない存在だった。

 しかし問題発覚以降はテレビ出演は厳しく制限され、所属していた吉本興業からは契約を解除され、事務所を移籍するもテレビ出演はまったくできず、YouTubeチャンネルなどの新しいメディアに活路を見いだすこととなった。

 木下氏はコント師としてテレビや舞台で活躍していたが、後輩芸人に対し楽屋でペットボトルを投げつけた問題が報じられたことを皮切りに、次々と過去の後輩芸人へのパワハラ問題が発覚。所属していた松竹芸能を退所せざるを得なくなった。その後やはりテレビではあまり見かけることはなくなってしまった。

 お笑い界に欠かせないと思われていた人たちが、さまざま問題を起こし、芸能界から干されていく。過去には大御所である島田紳助氏すら排除された。それが正しいか正しくないかはともかくとして、少なくともそれがお笑い業界の「けじめ」として機能している。

 その一方で中田選手は今回のような問題を起こしながら、別の球団に移籍して何事もなかったかのように一軍で試合をしている。いくら野球界に欠かせない存在で

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