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デジタル新聞の“歩き方”(下)――読者と記事の出会いを深めるメディアデザインを

デジタルならではの立体的歩き方の開発を期待。まずプレイリストで情報の水先案内から

校條 諭 メディア研究者

デジタル新聞の現状は「流しそうめん」

 テレビが登場して報道分野で力を持っていくのに伴い、新聞は速報よりも、中身の充実度を重視するようになった。それは確かだが、速報文化はしっかりと生きている。

 新聞が、そして新聞記者が速報をめざすのは当然だが、現在のデジタル新聞は“流しそうめん”のイメージが強いのだ。大小のニュースがどんどん流れている。

 実際にはテーマ別の“箱”を用意して過去の分を収納している。読者としては、「そこから勝手に掘り出して読んでね」と言われているような感じを受ける。

紙の新聞の完成された文化 多種多彩な記事を各面に配置

 改めて、紙の新聞(または紙面ビューアー)を1面から最終面まで大小の記事がレイアウトされているのを見てみると、実に完成された文化だとしみじみ感じる。

 その新聞に載っている記事の種類を見ると、速報的なニュース記事ばかりでなく、連載企画、時事解説、論説、オピニオン、暮らしの話題、人生相談、小説、本の紹介・書評、映画や演劇などの紹介・批評といった、掲載当日でなく後日に読んでもよい記事が実に多くある。順番にページを繰っていくとこれはという記事と出会えるのだ。

 デジタル新聞では、企画モノや連載記事であれば、ストックの箱が用意されているのでまだいいが、連載ではない単発の記事(ベタ記事を含む)とうまく出会う方法があるだろうか。毎日送られてくるニュースレターのオススメ記事に、小さなコラムや個人の投稿が選ばれていたという記憶はない。

デジタルは紙の長所も取り入れ、立体ならではの歩き方の開発を

 キーワード登録をしておくサービスがあるが、それには向かない場合も多い。

拡大朝日新聞2021年6月29日朝刊「私の視点」への投稿記事「ムラの定義に都市の論理」の紙面から
 たとえば、以前「ムラ社会」とか「原子力ムラ」という言葉遣いに疑問を呈する投稿記事と紙面で出会った。これを見て私はおおいに触発されたが、あらかじめキーワード登録をすることはできなかっただろう。キーワードが役立つのは、たとえば、「オンライン教育」に関する記事をチェックしておきたいというように、具体的に事象を限定できる場合である。

 あるいは、技術の力でパーソナライズのオススメ機能を導入するか。私が日頃読んでいる記事を、仮にAIで横断的に要因分析することが本当にできるとするなら、「言い古されている言葉への疑問」という、私が暗黙のうちに意識している軸を見いだせるかもしれない。ただし、それができるのはメディアではなくグーグルか。

 昨今、紙の新聞を過去のものとして切って捨てるようなもの言いが目立つが、新しいメディアは古いメディアのすべてを置き換えるのではなく、古いメディアのよいところを、たとえ形は変わっても取り入れるというのが望ましいあり方ではないか。

 読者を3次元の立体の中でどう歩かせるか。新たな編集のブレークスルーを期待したい。

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筆者

校條 諭

校條 諭(めんじょう・さとし) メディア研究者

1948年、神奈川県茅ヶ崎市生まれ。73年、東北大学理学部卒。同年より野村総合研究所、ぴあ総合研究所(現文化科学研究所)で情報社会、メディア産業、消費者行動等の調査研究に従事。97年に起業したネットビジネス会社「未来編集」で、コミュニティサービス「アットクラブ」をNTTと共同開発し、オンラインマガジン発行。99年、ネットラーニングの事業化に参加。2005年から、ポール歩き(ノルディックウォーキング、ポールウォーキング)の普及に取り組む。12年、NPO法人「みんなの元気学校」設立。現在、ネットラーニングホールディングス監査役、インパクトワールド監査役、近未来研究会コーディネーター。主著に 『ニュースメディア進化論』(2019年、インプレスR&D)、編著書に『メディアの先導者たち』(1995年、NECクリエイティブ)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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