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デジタル新聞の“歩き方”(下)――読者と記事の出会いを深めるメディアデザインを

デジタルならではの立体的歩き方の開発を期待。まずプレイリストで情報の水先案内から

校條 諭 メディア研究者

映像配信のNetflixが「ユーザーが作るプレイリスト」検討

 ところで、最近、映像ストリーミングサービスNetflixに関するひとつのニュースに注目した。ユーザーに映像作品のプレイリストをつくってもらうことを検討しているというのだ。

 このニュースを報じた米テック系メディア「Protocol」の記事ではuser-generated-playlistという言葉で報じている。ユーザーが作品を選んでつくられたプレイリストは他の人とも共有できるのだという。

音楽が発祥のプレイリスト。目利きのキュレーターの貴さ

拡大amazon musicのプレイリスト
 プレイリストという言葉は、音楽ストリーミングの世界で主に使われてきた。音楽は好きだが特にこだわりのない私にとって、音楽ストリーミングのプレイリストは本当にありがたい。

 過去から現代までの時を越えて、クラシックからJ-POPまでのジャンルにもしばられず、楽曲の“大海原”の中から、目(耳?)利きのキュレーター(選者)によって曲が選ばれて、さまざまなテーマのプレイリストが編成されている。

 「NHKプラス(NHK+)」という、2020年に始まった、テレビ番組をネット配信するサービス(同時配信と見逃し番組配信サービス)でも「プレイリスト」という言葉を使っている。

拡大NHKプラスのウェブ画面にあるプレイリスト
 ただし、プロの世界のプレイリストは、いずれもキュレーターの個人名が表示されていない。それに対して、実名の個人によるプレイリストをそろえているウェブサイトもあるし、またYouTubeには、本名かハンドルネームかは別として、目利きの個人が名前を出してプレイリストを作っている例がたくさんある。

 動画サービスのNetflixがどんなuser-generated-playlistを打ち出してくるか楽しみだ。

新聞にも読者によるプレイリストを

 デジタル新聞が出しているニュースレターはプレイリストだと言った。しかし、それはあくまでも供給サイドが選んだプレイリストである。では、読者の立場からのプレイリストはどうか。

 私のフェイスブック友達にYさんという私が頼りにしている人がいる。専門誌などのフリー編集者でインターネットをはじめとする技術解説書の著者でもある。社会的なテーマに強い関心を持っているが、趣味は私とずいぶん違う。そのYさんは、朝デジ、毎デジ、日経電子版を購読していて、関心を持った記事をフェイスブック(ただし友達限定モード)で随時紹介している。

 選ばれた記事は、特定テーマの解説や議論、気に入った書評など多岐にわたっている。これは、私のイメージするプレイリストの原型を成している。

 Yさんは、まずはたいてい紙面ビューアーから見るそうだ。そのあと、選んだ記事をクリックしてウェブないしテキスト形式の記事に移り、一部を引用している。Yさんの記事選択は、特定のテーマがあるわけではないが、元の全文を読んでみようという気持ちにしばしばさせられる。選択が新鮮で、読むと視界が広がるのがうれしい。

多彩な人材起用で個性的リスト登場 活用法も様々に

 Yさんのような“外の人”をキュレーターとして起用して新聞記事をもとにしたプレイリストが、毎週あるいは毎月いくつも読めるようになったらおもしろいのではないか。

 キュレーターとして手を上げた人に、たとえば直近1週間のオススメ記事として、深掘りの報道や連載企画、記者のコラム、映画評、人生相談などをピックアップしたプレイリストを毎週作成してもらうのだ。選んだ記事についてちょっとしたコメントがつくとなおいいだろう。

 さまざまな個性を持つ人たちを起用すれば、本当に同じデジタル新聞を読んでいる人たちなのだろうかと思えるほど異なる色合いのプレイリストができるだろう。それをウェブ上に置くか、ニュースレターとして発信するか、また、自社専属にするか、第三者のプラットフォーム上にするかなどいろんな選択肢があるだろう。

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筆者

校條 諭

校條 諭(めんじょう・さとし) メディア研究者

1948年、神奈川県茅ヶ崎市生まれ。73年、東北大学理学部卒。同年より野村総合研究所、ぴあ総合研究所(現文化科学研究所)で情報社会、メディア産業、消費者行動等の調査研究に従事。97年に起業したネットビジネス会社「未来編集」で、コミュニティサービス「アットクラブ」をNTTと共同開発し、オンラインマガジン発行。99年、ネットラーニングの事業化に参加。2005年から、ポール歩き(ノルディックウォーキング、ポールウォーキング)の普及に取り組む。12年、NPO法人「みんなの元気学校」設立。現在、ネットラーニングホールディングス監査役、インパクトワールド監査役、近未来研究会コーディネーター。主著に 『ニュースメディア進化論』(2019年、インプレスR&D)、編著書に『メディアの先導者たち』(1995年、NECクリエイティブ)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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