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「今の感染者増、半分は人災」「政治にも責任」~酸素ステーション発案の医師が異議

「国は感染抑制へ約束果たさず」と憤り総合的対応を訴え―神奈川県統括官インタビュー

茂木克信 朝日新聞田園都市支局長

拡大神奈川県が設けた酸素ステーション(かながわ緊急酸素投与センター)の内部=2021年8月6日、神奈川県提供

病院ではない。入院できず命落としかねぬ人への一時的な投与

――酸素ステーションとはどのような施設ですか

 「新型コロナの感染者のうち、自宅や宿泊療養施設で療養中に体調が悪化し、医師が酸素吸入や入院が必要と判断したのに搬送先が決まらない人に、一時的に酸素を投与しています。災害時にけが人や病人に最低限の処置をして命をつなぐ、応急救護所のような施設です」

 「決して病院ではありません。命を最終的に救うことを医療の世界では根治治療といいますが、肺炎を治すといった根本的な治療は病院で行います。酸素ステーションは、酸素がなかったら命を落としかねない人に酸素を吸っていただくという、最低限のことしかできません」

――なぜ設置したのですか

 「やはり感染者が急増した昨年11月からの第3波中の年末年始、療養中に血中酸素飽和度が低下したのに病床に空きがなく、入院できない人が相次ぎました。そうした人に酸素を投与するには二つの方法があります。一つは、持ち運びできる酸素濃縮器を自宅に届けること。もう一つは、酸素を吸える場所に患者を集めること」

 「今は県内の一部で、地域の医師や看護師が架電や自宅訪問によって健康観察を行う『地域療養の神奈川モデル』が始まっています。ですが、当時は実施前でした。患者を集めて医療者の管理下で酸素投与をするべきだと考え、酸素ステーションを設けることにしたのです」

 「今は医師や看護師が動いてくれる地域には、酸素濃縮器を提供しています。つまり二つの方法が動いているのです」

拡大コロナ病床の高水準の利用率が続くことから、神奈川県が「湘南ヘルスイノベーションパーク」内に整備した臨時医療施設=2021年1月、県提供

「応急救護所」としてDMAT中心に立ち上げ、訓練続け設備維持

――稼働までに半年の間が開きました

 「2月に県立スポーツセンター(藤沢市)内に立ち上げました。応急救護所の運営はDMATの基本的な教育プログラムの中に入っていて、DMATのメンバーは訓練を重ねています。ですから、立ち上げは彼らを中心にお願いしました。説明するときは『応急救護所と同じだから』と伝えました」

 「野戦病院という似た言葉がありますが、病院という以上は色々な医療を提供できないといけません。そんな施設を速やかにつくれるのは、日本では自衛隊くらいでしょう。我々がめざしたのはテントレベルの、最低限の酸素を提供する施設です。でも、それだけで、失われかねない命がつながるのです」

 「2月以降、いつでも稼働できるようにトレーニングを重ね、感染者が減ったときも設備を維持してきました。県立スポーツセンターが東京五輪・パラリンピックの期間中、外国チームの事前キャンプに使われることから、7月から一時的に今の場所に移っています」

拡大神奈川県は2月、準備が整った緊急酸素投与センター(酸素ステーション)を報道陣に公開し、療養の様子を実演した。この時は当面、稼働させない方針で、知事は「使われないことがベストシナリオ」と語っていた=2021年2月2日、神奈川県立スポーツセンター

使わないに越したことのない保険の施設 使用は「悔しい」

――早めに用意したことが功を奏しました

 「強調したいのですが、酸素ステーションは、病床逼迫時の保険としてあった方がいい施設です。でも、使わないに越したことはありません。対外的には『使うつもりはない』と言ってきました」

 「これを使えば、今の感染状況が解決するというものではありません。保険として用意したものを使わないといけなくなったことを、真摯(しんし)に受け止めないといけません。忸怩たる思いがありますし、悔しいです」

拡大      阿南英明・神奈川県医療危機対策統括官

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筆者

茂木克信

茂木克信(もてぎ・よしのぶ) 朝日新聞田園都市支局長

1973年、福岡県生まれ。97年朝日新聞社入社。盛岡支局(現総局)、豊橋支局、名古屋社会部、東京社会部、仙台総局、石巻支局、秋田総局次長などを経て、2019年5月から現職。同年9月から神奈川県政担当を兼務。個人情報を含む膨大な行政文書が記録された同県庁のハードディスクが、ネットオークションで転売されていたことをつかみ、同年12月6日付朝刊で特報。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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