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ブルーインパルスの塗料付着問題。自衛隊をあくまで擁護する人たちの危うさ

赤木智弘 フリーライター

 8月24日、東京パラリンピックの開会を祝うために航空自衛隊に所属するアクロバット飛行チーム「ブルーインパルス」がカラースモークを噴出するパフォーマンスを行った。

 ところが着陸の際、適正な高度よりも低い高度でカラースモークを噴射したため、十分に拡散しなかった塗料が埼玉県・入間基地近くの住宅に停めてあった車、おおよそ300台程度に付着した。塗料は水や洗剤で洗っても落とせず、塗り直しが必要になるという。

 航空自衛隊はこの事実を認めており、パイロットは「カラースモークを使い切りたかった」「基地周辺の人たちに喜んでもらいたかった」と説明している。

スモークを出しながら飛行するブルーインパルス=2021年8月24日、東京都港区拡大スモークを出しながら飛行するブルーインパルス=2021年8月24日、東京都港区

 さて、新型コロナウイルス渦の最中にも空を飛び、政権に対する批判の矛先を逸らすために利用された感があるブルーインパルスだが、オリパラの飛行に関しては、開催を祝うという意味で正しい運用法であり、好ましいパフォーマンスであると考えている。

 しかし、残念ながら今回の飛行では車への塗料の付着という問題を起こしてしまった。

 ブルーインパルスは過去にも同じ問題を起こしており、それがきっかけの1つとなって1999年以降カラースモークの使用を自粛していたという。

 そして2020年のオリパラでの使用再開のために試験などを繰り返し、なんとか今年カラースモークでのパフォーマンスを実施することができた。

 しかし結果として、過去と同じ問題を引き起こしてしまったのである。

 ニュース記事などからは、まるでパイロットが個人的判断からのサービスで、低い高度でのカラースモークを実施したように感じてしまうが、自衛隊という組織で、個人的判断での逸脱行為が許されるとすればとんでもない話である。

 だが、予備機が3機とも同じような低高度でカラースモークを噴射していたことから、実際は指令側から上空でカラースモークを確実に使い切るような指示が出ており着地のギリギリで余っていたカラースモークを噴射せざるを得なかったと考える方が妥当だろう。

 いずれにせよ、航空自衛隊側がカラースモーク使用の適正高度を守らなかったというミスは明らかであり、言い訳の余地はない。現状、ブルーインパルスはカラースモークを扱うだけの技術レベルに無いと言われても仕方がないだろう。

アフガニスタンに残る日本人らを退避させるため、航空自衛隊入間基地で準備するC130輸送機(手前の2機)。近くにはパラリンピック開催にあわせて都心を飛行する前のブルーインパルスの機体(右上)もあった=2021年8月24日午後0時45分、埼玉県狭山市拡大都心を飛行する前のブルーインパルス(右上)。一番手前の2機は、アフガニスタンに残る日本人らを退避させるため準備するC130輸送機=2021年8月24日、埼玉県狭山市の航空自衛隊入間基地

筆者

赤木智弘

赤木智弘(あかぎ・ともひろ) フリーライター

1975年生まれ。著書に『若者を見殺しにする国』『「当たり前」をひっぱたく 過ちを見過ごさないために』、共著書に『下流中年』など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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