2021年09月04日
8月24日、東京パラリンピックの開会を祝うために航空自衛隊に所属するアクロバット飛行チーム「ブルーインパルス」がカラースモークを噴出するパフォーマンスを行った。
ところが着陸の際、適正な高度よりも低い高度でカラースモークを噴射したため、十分に拡散しなかった塗料が埼玉県・入間基地近くの住宅に停めてあった車、おおよそ300台程度に付着した。塗料は水や洗剤で洗っても落とせず、塗り直しが必要になるという。
航空自衛隊はこの事実を認めており、パイロットは「カラースモークを使い切りたかった」「基地周辺の人たちに喜んでもらいたかった」と説明している。
さて、新型コロナウイルス渦の最中にも空を飛び、政権に対する批判の矛先を逸らすために利用された感があるブルーインパルスだが、オリパラの飛行に関しては、開催を祝うという意味で正しい運用法であり、好ましいパフォーマンスであると考えている。
しかし、残念ながら今回の飛行では車への塗料の付着という問題を起こしてしまった。
ブルーインパルスは過去にも同じ問題を起こしており、それがきっかけの1つとなって1999年以降カラースモークの使用を自粛していたという。
そして2020年のオリパラでの使用再開のために試験などを繰り返し、なんとか今年カラースモークでのパフォーマンスを実施することができた。
しかし結果として、過去と同じ問題を引き起こしてしまったのである。
ニュース記事などからは、まるでパイロットが個人的判断からのサービスで、低い高度でのカラースモークを実施したように感じてしまうが、自衛隊という組織で、個人的判断での逸脱行為が許されるとすればとんでもない話である。
だが、予備機が3機とも同じような低高度でカラースモークを噴射していたことから、実際は指令側から上空でカラースモークを確実に使い切るような指示が出ており着地のギリギリで余っていたカラースモークを噴射せざるを得なかったと考える方が妥当だろう。
いずれにせよ、航空自衛隊側がカラースモーク使用の適正高度を守らなかったというミスは明らかであり、言い訳の余地はない。現状、ブルーインパルスはカラースモークを扱うだけの技術レベルに無いと言われても仕方がないだろう。
僕が気になったのはこのニュースに対するネットの反論である。
車に落とせない塗料が付いてしまったということは、当然車の資産価値が大きく下がるわけで、カラースモークの低空噴射が多くの人に迷惑をかける行為であったことは明らかである。そしてそれは当の航空自衛隊が認めている。
にもかかわらず、自衛隊を擁護しようとしているのか、「自分だったら記念としてとっておく」と書き込む人が多発したのである。
「自分だったら」と言われても、着色汚れが付いてしまった車はあなたの車ではない。
最近、病気をしていたアントニオ猪木氏の顔色が良くなり、退院したことが報じられたが、猪木氏といえば、ファンに対してビンタをするパフォーマンスが有名だった。
あれもファン側がお願いしてビンタされているから記念になるのであって、たまたま向こうからアントニオ猪木氏がやってきて、すれ違いざまにビンタをされたら、単なる突然の暴行である。
それと同じように、車の持ち主が意図しない着色汚れは単に「車が他人に汚された」ということでしかなく、とてもではないが他人が「記念になる」などと喜ぶような話ではないのである。
また、パイロットが「基地周辺の人たちに喜んでもらいたかった」と説明していることを受けて「マスコミは悪意で報じるが、パイロットは喜ばせたかったのだから、こっちを中心に報じろ」と主張している人も見かけた。
いやいや、喜ばせたかったとしても、
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