アスリートと競技パートナーが体感したパラスポーツの未来と課題
躍進は自己研鑽と支援の成果~強化拠点や人材の一層の充実と、共生への意識を
増島みどり スポーツライター

東京パラリンピック閉会式に臨む各国・地域の選手たち=2021年9月5日、国立競技場
クラス唯一の義足ハイジャンパー・鈴木徹4位の価値
東京パラリンピック陸上の男子走り高跳びT64(運動機能障害・義足)に出場した41歳のベテラン、鈴木徹(SMBC日興証券)は、1㍍88の今季ベストを跳んで4位に入った。これまでロンドン、リオデジャネイロと連続して4位。6大会目の東京で狙った悲願のメダル獲得には届かなったが、それでも大きな価値と意義のある入賞といえる。同じT64のクラスには運動機能障害の選手も出場しており、ただ1人「義足の」ジャンパーだったからだ。
メダリスト全員が2㍍を超える記録をマーク。高校生の全国レベルに一気にあがるほど従来とは異なるレベルの記録となった。

東京パラリンピック・男子走り高跳び(義足・機能障害T64)決勝での鈴木徹の跳躍=2021年9月3日、国立競技場
出場6大会のベテラン、大声援受け競技続行に意欲
「メダルが獲得できずにとても悔しいが、このクラスで義足の選手は自分ひとりだったので出場に価値があったと思う。メダルをめぐる旅をもう少し続けてみたい」と試合後話し、来年行われる世界パラ陸上選手権(神戸)を含む競技生活の続行に意欲を見せた。
大雨にもかかわらず、学校連携プログラムで観戦した子どもたちから拍手の大応援を受け、競技を続ける希望が湧いたという。経験を次世代に伝えるためにも、指導と現役を並行した「プレーイングマネジャー」の道も模索する。

各国・地域の選手たちが見守るなか、日の丸を手に入場する卓球の岩渕幸洋選手と日本選手団=2021年9月5日、国立競技場
日本はメダル51の躍進、種目により世界との課題鮮明に
5日に閉幕した東京パラリンピックには、162カ国と地域、また難民選手団を加えた約4400人が出場。日本は金メダル13を含む51個のメダルを獲得し、2016年リオ大会の金メダル0から躍進を遂げた。
陸上に限ると、視覚障害や、車いす競技でメダルを獲得できたものの、鈴木のような義足の種目でメダルを取れなかった。

東京パラリンピック・男子走り幅跳び(義足・機能障害T64)で跳躍するドイツのマルクス・レーム。3連覇を果たした=2021年9月1日、国立競技場
今大会で大きな注目を集めた義足の「超人」と敬称される男子走り幅跳びのマルクス・レーム(33=ドイツ)は、8月の五輪の同種目で4位に相当する8㍍18を跳んで大会3連覇を達成。また女子でも、イタリアが義足・運動機能障害のクラス100㍍で金、銀、銅メダルを独占するなど、義足選手の活躍が目立っただけに、鈴木は「世界との差を広げないためにも、様々な課題が鮮明になった」と指摘する。

鈴木徹選手は山梨市在住で、山梨県内でトレーニングを続ける。写真は山梨市で開かれた東京パラリンピックの壮行会で、児童らと記念写真を撮る鈴木選手(中央)=2021年7月14日、山梨市役所