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ペットの療法食でまで稼ごうとする転売屋は、市場を破壊する存在だ

赤木智弘 フリーライター

 大手フリマサイトが犬猫用の療法食の出品禁止を相次いで発表した。

 メルカリラクマは9月2日から、ヤフオク!は9月10日から当面の間出品を禁止している。

 「療法食」とは、病気にあわせて栄養成分が調整された、獣医師などの指導の下で食事管理に使用されるペットフードのことである。

 この療法食が、新型コロナ禍による世界的なペットブームでずいぶん手に入りにくくなっていたようだ。

 療法食は代替品が無い場合も多く、また代替品があってもなかなか食べてくれないペットもいる。飼い主たちにとっては同じ療法食を安定的に手に入れることは、ペットの命を思えば絶対なのである。

Ro_ksyshutterstock猫や犬の療法食が品薄になりフリマでの出品が相次いで禁じられるようになった Ro_ksy/Shutterstock.com

 そこに目を付けたのが転売屋である。

 転売屋はネット通販やホームセンターなどで手に入る療法食を買い占め、必要とする人に高値で売りつけ始めた。いわば、転売屋はペットの命を人質にして金を稼いでいたと言っていいだろう。

 そうしたことから、フリマサイトに獣医などからの働きかけがあり、療法食が安定的に供給される状況になるまで、一時的に出品が禁じられるという流れが生まれたのである。

マスク、トイレットペーパー、ゲーム、チケット……

 さて、療法食がペットの命に関わるものであるなら、人間の薬と同じように取引が規制されてもいいはずである。

 当然、人間の薬を転売屋が許可なく扱えば、医薬品医療機器法(薬機法)の規制に引っかかる。

 新型コロナウイルスにポビドンヨードのうがい液が効果があるという話が出てきたときに、一部の転売屋が第3類医薬品に指定されている製品を転売して逮捕された。

フリマアプリ「メルカリ」では、うがい薬に「売約済み」の表示が次々についた。定価の4倍ほどの値段で転売されたものもあった吉村大阪府知事がコロナ感染対策にうがい薬を推奨したことから、フリマアプリ「メルカリ」では「売約済み」の表示が次々についた。定価の4倍ほどの値段で転売された商品も

 しかし療法食は商取引上、薬品ではなく、あくまでもペットフードという扱いであるため、薬機法の規制にひっかからないのである。

 では古物商としての許可という話はどうだろうか。

 これは基本の話になるが、古物商免許が必要なのは一度消費者の手に渡った「古物」を有償で買い取り、それを販売する場合であり、店舗で新品として買った商品を売る分には特別な免許はいらないのである。

 そのおかげで私たちは新品として購入し、使わなくなった品物をフリマサイトに出品したり、リサイクルショップなどに売ることができる。

 療法食も新品を手に入れれば、それを売ることに法的な規制は存在しないのである。

 療法食の事例を見ても分かるように転売屋はとても迷惑な存在だ。

 療法食以外でも、新型コロナが流行りだした初期にはマスクやトイレットペーパーなどが転売屋の餌食となった。また、僕はテレビゲームが好きだが、Nintendo SwitchやPS5といった最新のゲームハードも、コンサートやライブのチケットなども、長い間転売屋の被害に遭い続けてきた。

高値でマスクを不正転売した国民生活安定緊急措置法違反で押収した転売したものと同型のマスク=2020年4月、愛知県警提供.高値でマスクを不正転売し、国民生活安定緊急措置法違反などで摘発される事件も=2020年4月、愛知県警提供

 趣味を持っている人なら、必ず一度は転売屋を迷惑な存在であると憎んだことがあるだろう。

 ところが、

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