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ジェンダー平等を進める力に~女子初のプロサッカー「WEリーグ」開幕

社会課題を目標に掲げたリーグのメッセージ。女性活躍と多様性を認めあう未来へ

増島みどり スポーツライター

世界の強豪にこれ以上遅れを取らぬため、あえてコロナ下でスタート

 プロリーグの発足は、国内の競技レベルの向上に好影響を与えるものでなければ価値は薄れる。

 今夏の東京オリンピックで「なでしこジャパン」はグループリーグを1勝1敗1分けと3位で突破。8強に入ったものの準々決勝でスウェーデンに1-3と完敗を喫した。

 16年リオデジャネイロ五輪の出場権を逸して以来、19年のW杯フランス大会でもトーナメントに進出するも進境著しいオランダに敗れ、東京でもスウェーデンに完敗と、いずれも欧州勢の壁に跳ね返されている。

拡大東京五輪サッカー女子準々決勝で、南萌華(右から2人目)はゴール前で競り合うがスウェーデンのエリクソン(6)に先制ゴールを許す。左は清水梨紗=2021年7月30日、埼玉スタジアム
拡大W杯フランス大会決勝トーナメント1回戦でオランダに敗れ、天を仰ぐ熊谷(手前左)=2019年6月25日、フランス・レンヌ

世界のトップ争い激化。特別ではなくなった日本の強み

 11年のW杯優勝以降、体格では劣る日本が示した、高い技術を活かす組織的なサッカーを世界中が目標に据えるようになった。

 欧州の国々や、アジアでも東京五輪で初の4強に進出したオーストラリアに代表されるように、体格も備えた女子選手たちが日本の組織力や技術を本格的に追随したため、日本の持ち味が特別ではなくなり、反対に自分たちの新たなスタイル、長所を模索する皮肉な結果となってしまった。

 東京では、カナダが初めて金メダルを獲得し、スウェーデンが2大会連続準優勝に輝くなど、女王アメリカに代わるトップの座をめぐる争いは激化する。世界的にも、欧州の男子強豪クラブを中心とした女子クラブの併設と強化、アメリカのように代表チームを特化する方法など、それぞれが女子サッカーの強化策を打ち出す。

拡大東京五輪サッカー女子3位決定戦(豪州―米国)、中盤で競り合う豪州のラソ(右)と米国のダン=2021年8月5日、カシマスタジアム

日本に必要な明確な強化策。プロ化とともに国際化も課題

 遅れを取った日本も、「ここでプロリーグをスタートさせ、今後の強化策を明確にしていかなければ、といった危機感ももちろん抱いている」と、WEリーグ大宮の総監督を務める佐々木則夫氏(11年W杯優勝監督)は話す。

 今後、海外の有力選手の招へいや、海外の指導者がクラブを指揮するなどの「国際化」が重要なテーマとなる。

 昨年の皇后杯覇者日テレ・東京ヴェルディベレーザと、リーグ覇者の三菱重工浦和レッズレディースの開幕戦(味の素フィールド西が丘、浦和が2-1で勝利)を観戦した川淵三郎氏は試合後、「選手たちが、プロになり、一生懸命に良いプレーを見せようという気概が見えた」と、再び世界をリードする日に向けてエールを送った。


筆者

増島みどり

増島みどり(ますじま・みどり) スポーツライター

1961年生まれ。学習院大卒。84年、日刊スポーツ新聞に入社、アマチュアスポーツ、プロ野球・巨人、サッカーなどを担当し、97年からフリー。88年のソウルを皮切りに夏季、冬季の五輪やサッカーW杯、各競技の世界選手権を現地で取材。98年W杯フランス大会に出場した代表選手のインタビューをまとめた『6月の軌跡』(ミズノスポーツライター賞)、中田英寿のドキュメント『In his Times』、近著の『ゆだねて束ねる――ザッケローニの仕事』など著書多数。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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