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「工藤会トップに死刑判決」でどうなる暴力団~日本警察を挙げた頂上作戦の行方(上)

周到な準備、判決への長い道のり

緒方健二 元朝日新聞編集委員(警察、事件、反社会勢力担当)

日本警察挙げて臨んだ「頂上作戦」

拡大工藤会総裁の野村悟被告宅に入る捜査員ら=2014年9月11日、北九州市小倉北区

 捜査当局が一定の達成感を味わっている今回の判決ですが、ここに至るまで長い時間を要しました。7年前の2014年9月11日に福岡県警が着手した「頂上作戦」が直接の端緒となりましたが、その事前準備は周到でした。

 頂上すなわち組織のトップを逮捕し、長期間にわたって拘置所や刑務所に入れて「社会不在」にして指示・命令系統を遮断しないと工藤会による市民や企業襲撃を止められない、暴力団壊滅を唱えながら一向に実現できないでいる警察の威信にもかかわる……。「福岡県警だけでなくオール日本警察で臨まなければ対処できない」との危機感は警察の元締めである警察庁が強く抱いていました。

 その筆頭格は頂上作戦着手時の警察庁長官、米田壮さん(69)です。大阪府警捜査2課長や警視庁刑事部長、警察庁組織犯罪対策部長、警察庁刑事局長を経験した刑事部門のエキスパートです。和歌山県警本部長時代には「毒カレー事件」の捜査を指揮しました。警察キャリアには珍しく暴力団の内情や捜査にも精通しています。大きな組織の傘下組織の動向にも詳しく、感心させられたことがしばしばありました。

 警察の暴力団対策の主な対象組織は長く、国内最大勢力の山口組(本拠・神戸市)や、東京を拠点に表社会の経済活動にも浸透を図る住吉会や稲川会でした。ところが米田さんは早くから工藤会の凶悪性を警戒していました。勢力範囲は福岡、長崎、山口の3県で、組員数で山口組の10分の1にも満たない工藤会ですが、資金獲得や勢力拡大のためなら企業や市民、時には警察への襲撃も厭わないためです。

 03年8月には傘下組織の組員が、経営者が暴力団排除に協力的だった北九州市内のクラブに手榴弾を投げ入れ、多数の女性従業員らに大けがを負わせました。その後も大手自動車会社の工場に手榴弾が投げ込まれたり、地元大手企業の幹部宅に爆発物が放り込まれたりする事件が相次ぎました。警察は多くに工藤会が関与したと疑っていますが、未解決事件も少なくありません。

 福岡県の暴力団排除条例を12年に改正して設けた「暴力団排除標章」制度をめぐっては、標章を店内に貼った店の女性らが相次いで襲われました。12年4月には福岡県警で長く暴力団捜査を担った男性が銃撃される事件がありました。

拡大手榴弾が爆発したクラブ「ぼおるど」の店内=2003年8月18日、北九州市小倉北区で、福岡県警提供
拡大繁華街のビルに掲げられた「暴力団員立入禁止」の標章=2015年11月25日、北九州市小倉北区

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筆者

緒方健二

緒方健二(おがた・けんじ) 元朝日新聞編集委員(警察、事件、反社会勢力担当)

1958年生まれ。毎日新聞社を経て88年朝日新聞社入社。西部本社社会部で福岡県警捜査2課(贈収賄)・4課(暴力団)。20余年いた東京本社社会部で警視庁捜査1課(地下鉄サリンなどオウム真理教事件)・公安、国税、警視庁キャップ(社会部次長)5年、社会部デスク、編集委員、犯罪・組織暴力専門記者など。2021年5月に退社 【Twitter】@jikenji3783

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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