赤木智弘(あかぎ・ともひろ) フリーライター
1975年生まれ。著書に『若者を見殺しにする国』『「当たり前」をひっぱたく 過ちを見過ごさないために』、共著書に『下流中年』など。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
壊されたレトロ自販機は代わりがない
この9月、深夜に若いカップルが笑いながらハンバーガーの自動販売機の注文ボタンを破壊したという事件があった。
現場は「レトロ自販機の聖地」とも呼ばれ、その種類の豊富さと、首都圏からもアクセスしやすいことから、古い自動販売機を懐かしがる年齢の人から、昭和レトロを求める若い人などにも人気のある、神奈川県相模原市のタイヤ販売店である。
どうやら自販機がお金を受け付けなかったことで、ボタンを壊れるまで殴ったとみられている。
僕は昭和50年生まれである。子供の頃はこうした食品の自販機を置いたオートパーラーはありふれた存在だった。
ハムトーストやうどん・そば、かき氷など、今メディアで「レトロ自販機」と呼ばれる食品の自販機は、いずれもかつて慣れ親しんだ懐かしい存在である。幹線道路沿いに今のようにチェーン店の看板がならんでいなかった頃、深夜に車を走らせるトラックドライバーたちにとっても深夜でも温かい物が食べられる憩いの場であった。
僕は食品自販機で販売されるハンバーガーが好きで、家族で遠出するときは、必ずと言っていいほど買ってもらっていた。そういう意味では家族と過ごした日々の大切な思い出の1つとなっている。
箱ごと冷凍されたハンバーガーは、購入時に自販機内部の電子レンジで温められる。出てきた時は持てないほど熱く、解凍の際の蒸気でバンズがしわしわになっていた。だがそのジャンク感こそが食品自販機の魅力であった。
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