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「工藤会トップに死刑判決」でどうなる暴力団~日本警察を挙げた頂上作戦の行方(下)

壊滅への壁、警察がとるべき対策は

緒方健二 元朝日新聞編集委員(警察、事件、反社会勢力担当)

所得税法違反容疑の逮捕、モデルケースとなるか

 頂上作戦はまだ途上です。

拡大工藤会総裁の野村悟被告らを所得税法違反の疑いで逮捕し、会見に臨む吉田尚正・福岡県警本部長=2015年6月16日、北九州市・小倉北署
 警察庁首脳が樋口真人・福岡県警本部長の後任に指名したのは吉田尚正さん(60)です。警察庁警備企画課長や警視庁刑事部長など刑事、警備・公安畑をバランスよく経験したエースキャリアです。暴力団分野では警察庁暴力団対策課長を務めました。宮崎県警本部長在任中の06年には宮崎県発注の事業をめぐる官製談合事件を摘発、当時の前知事も逮捕しました。もちろん宮崎県警の捜査員が優秀だったゆえの成果ですが、警察庁首脳は吉田さんの本部長としての捜査指揮力を高く評価したのです。

 15年1月に福岡県警本部長になった吉田さんは、樋口さんから引き継いだ頂上作戦をさらに進め15年6月、工藤会トップを所得税法違反容疑で逮捕しました。懲役3年、罰金8千万円の有罪が確定した判決によると、組織が建設業者などから集めた「上納金」のうち約8億円について「金庫番」の組員と共謀して申告せず、所得税約3億2千万円を脱税したとされました。暴力団の力の源泉は「暴力」と「カネ」です。資金源を断ち、暴力団の弱体化を促すモデルケースとなるかも知れません。

 吉田さんは今年9月、私に今回の判決について「警察、検察の地道な努力を裁判所が認めてくれました。今後の暴力団捜査がよい方向に進んでいけます」と語りました。

「襲撃の指示ができなくなる」 抑止効果への期待

 米田壮さんの後任として15年1月に警察庁長官になったのは金高雅仁さん(67)です。捜査2課長を警視庁と警察庁でやり、警視庁刑事部長、警察庁刑事局長を務めました。在イタリア日本大使館勤務時代には、現地の捜査当局によるマフィアなど犯罪組織への対策をつぶさに学びました。

拡大歯科医が襲撃された現場を視察する金高雅仁・警察庁長官(中央)=2015年5月29日、北九州市小倉北区
 長官になって5か月後の15年6月29日、東京・内幸町の日本記者クラブで講演し、工藤会対策について踏み込んだ発言をして注目されました。

 「トップを死刑や無期懲役にもってゆき2度と組に戻れない状態をつくる。徹底した捜査を遂げる」

 言葉通りに今年8月の判決公判ではトップに死刑、ナンバー2に無期懲役が言い渡されました。9月に当時の発言の真意を聞くと「頂上作戦着手から9か月がたち、警察は捜査で苦労していた。一方、工藤会の側は『その程度か』と高をくくっていた。工藤会を壊滅させるという警察の本気度を示したかったのです」と答えました。

 判決について金高さんは「暴力団対策上すごく大きな意味を持つ」と評価します。実行犯への直接の指示がなくても、トップが一審とはいえ死刑判決を受ける前例ができたことで、暗黙であっても襲撃の指示ができなくなり、こうした凶悪犯罪の抑止効果が生じるというのです。

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筆者

緒方健二

緒方健二(おがた・けんじ) 元朝日新聞編集委員(警察、事件、反社会勢力担当)

1958年生まれ。毎日新聞社を経て88年朝日新聞社入社。西部本社社会部で福岡県警捜査2課(贈収賄)・4課(暴力団)。20余年いた東京本社社会部で警視庁捜査1課(地下鉄サリンなどオウム真理教事件)・公安、国税、警視庁キャップ(社会部次長)5年、社会部デスク、編集委員、犯罪・組織暴力専門記者など。2021年5月に退社 【Twitter】@jikenji3783

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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