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[下]「スポーツの力」を積極的に疑う時が来ている

「レガシー」などいらない。東京大会の記憶に依存しないスポーツと社会の関係を作ろう

小笠原博毅 神戸大学大学院国際文化学研究科教授

アスリートを「肉体」に閉じ込めたクーベルタン

 現在公開中のスパイク・リー監督『アメリカン・ユートピア』は、トーキング・ヘッズのデイヴィッド・バーンによるブロードウェイでのパフォーマンスの映像作品だが、そのクライマックスは警察の暴力によって命を落とした人々の名を連呼するジャネール・モネイのプロテストソング「ヘル・ユー・トーンバウト(何おかしなこと言ってんだ)」のシーンだろう。数えられただけでも12人の名前が叫ばれ、トレイヴォン・マーティンからジョージ・フロイドまで写真が映し出される。BLM(ブラック・ライヴス・マター)運動の象徴的なチャントである。

デイヴィッド・バーン(右から2人目)らによるパフォーマンス=2018年7月、ベルギーのフェスティバル「ロック・ウェルフテル」拡大デイヴィッド・バーン(右から2人目)らによるパフォーマンス=2018年7月、ベルギーのフェスティバル「ロック・ウェルフテル」 Ben Houdijk/Shutterstock.com

 ミュージシャンであるバーンがこれをやっても、もはや誰も「音楽に政治を持ち込むな」とは言わないだろう。バーン自身のリベラリストとしての歴史を知っていようがいまいが、またそれを支持しようがすまいが、ミュージシャンが社会的争点をパフォーマンス上で採り上げ、ある種の議題喚起をすることはもはや普通のことだ。小説家しかり、役者しかり、芸術家しかり、である。

 ところが、2020年の全米オープンテニスで大坂なおみが

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筆者

小笠原博毅

小笠原博毅(おがさわら・ひろき) 神戸大学大学院国際文化学研究科教授

1968年東京生まれ。専門はカルチュラル・スタディーズ。著書に『真実を語れ、そのまったき複雑性においてースチュアート・ホールの思考』、『セルティック・ファンダムーグラスゴーにおけるサッカー文化と人種』など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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