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早くも正念場のサッカー日本代表~W杯アジア最終予選、1敗も許されぬ10月連戦へ

7大会連続出場は? 常に過酷だった過去の最終予選を思い起こす

増島みどり スポーツライター

アジア最終予選の初戦・オマーン戦でミドルシュートを放つ大迫。日本代表は0-1で敗れた=2021年9月2日、パナソニックスタジアム吹田

異例の代表発表 視察先の欧州からオンライン会見

森保一監督
 すでに2試合を消化した、22年W杯カタール大会に向けたアジア最終予選の、10月2連戦(7日アウェーでサウジアラビア、12日埼玉でオーストラリア戦)のメンバー発表は、コロナ禍の影響で初めて、森保一監督(53)が視察中の欧州から(現地午前)オンラインで行う異例の形で実施された。

 9月7日にドーハ(カタール)で同予選中国戦(1-0で勝利)を終えた森保監督ら代表スタッフは、帰国に伴う隔離時期を経て再度、サウジアラビアに向かう手続きの難しさを避けて、カタールから欧州へ直行。ドイツのデュッセルドルフに日本協会が置いた欧州オフィスを拠点に、車で移動できる範囲で選手たちを訪問、試合を視察するなどして情報を収集した。

 スペインのマジョルカに在籍する久保建英とスコットランドのセルティックスの古橋享梧(ふるはし・きょうご)は負傷で、ベルギーのヘンク在籍の伊東純也は累積警告のため欠場(サウジアラビアで合流し豪州戦には出場可能)する。

アジア最終予選の中国戦に臨んだ日本代表。1-0で勝利をあげた=2021年9月7日、カタール・ドーハ

「最大の勝ち点を」と連勝誓う森保監督 田中碧・三好・橋岡選出

 こうした苦境に、森保監督は欧州での視察で実際に会って確認した「コンディションの上がってきている選手」を選出。特に、東京五輪ではボランチで起用した田中碧を2019年12月のE-1選手権以来1年10カ月ぶりに招集したほか、9月には招集していなかった三好康児、DFに橋岡大輝を呼ぶなど、五輪で監督として起用した若手に、1敗を負うプレッシャーを背負う中での活躍と、勝利への貢献を求めた。

森保監督は、東京五輪で起用した若手3人を今回代表に招集した。【左】東京五輪のフランス戦で右サイドからクロスを上げる橋岡大樹=2021年7月28日【中】五輪の準々決勝ニュージーランド戦で競り合う田中碧(17)=7月31日【右】五輪のフランス戦で、ゴールを決めて駆け出す三好康児。右隣は田中碧=7月28日
 監督は「(この10月2連戦で)最大勝ち点を」と、グループの首位と2位から2勝6点を奪って、現在の4位から浮上すると誓った。

突破し続けた過去のボーダーラインは1敗 もう負けられない崖っぷち

 10月の連戦は早くも正念場となる。過去日本の最終予選を振り返ると、2敗では出場できない。

 18年ロシア大会の最終予選(ハリルホジッチ監督)も初戦黒星でスタートしたが、後に連勝で首位を奪還。最終戦のアウェー、サウジアラビアで敗れて(0-1)2敗したが、すでに突破決定後、いわば消化試合での1敗だった。

ロシア大会のアジア最終予選では、初戦でUAEに敗れた。試合終了直後、肩を落とす日本代表の選手たち=2016年9月1日、埼玉スタジアム
 開催国だった2002年日韓大会を除き、過去突破した5回の最終予選を振り返ると、各グループの出場国数など、大会方式に違いはあるが1敗という「ボーダーライン」が浮かぶ。

 「ジョホールバルの歓喜」と言われ初めてW杯出場を決めた98年フランス大会最終予選(加茂周監督―岡田武史監督)は5カ国で4引き分けに苦しんだが、意外にも敗戦はホームの韓国戦のみで、イランとのプレーオフで初出場を勝ち取った。06年ドイツ大会の予選(ジーコ監督)もアウェーでイランに1敗を喫したが、4カ国の首位で突破を果たしている。

 10年南ア大会(岡田監督)は、3分けと勝ち切れない試合はあったが、それでも敗戦はオーストラリアのみと踏ん張りグループ2位(5カ国)で突破。本大会ではアウェーのW杯で初めてベスト16に入った。

 ザッケローニ監督が率いた14年ブラジル大会もやはり、アウェーのヨルダンで1敗したが(5カ国)世界中の予選出場国でW杯一番乗りとなった。

ブラジル大会最終予選、アウェーでのヨルダン戦で、岡崎慎司(9)はペナルティーエリア内で倒されたがファウルにならず。日本代表はこの試合に破れて予選突破を決められず、強化プランの見直しを余儀なくされた=2013年3月26日、アンマン

最低でも「1勝1分」が必要な今シリーズ

 2試合終了時点で日本は勝ち点3でB組4位。アウェーのサウジ戦(同2位)、ホーム(12日、埼玉スタジアム)の豪州(得失点差で同首位)とも敗戦はできず、皮算用なら最低でも勝ち点4で(1勝1分)、4試合合計勝ち点7で切り抜けなければ今後の戦いは、出場に赤ランプが点灯したまま厳しくなる。

今回のアジア最終予選の初戦でオマーンに敗れ、厳しい表情を見せる久保建英(17)ら日本代表選手たち。右から2人目は森保一監督=2021年9月2日、パナソニックスタジアム吹田

田中碧、オナイウら新代表に期待―主力のアクシデントをバネに

 森保監督は長い欧州視察中にオンライン取材に応じ、デュッセルドルフを拠点に、ベルギー、フランス、オランダを車で移動してクラブや練習を視察したと明かしていた。

キリンチャレンジカップ2021のU24日本代表―ホンジュラス戦で、シュートを放つ田中碧=2021年7月12日
 その中で「選手とも意外にコミュニケーションを取れた」と、コロナ禍でも選手と対面した充実感を示しており、今夏の東京五輪後に移籍したMF・田中碧(23=ドイツ2部のデュッセルドルフ)は試合だけではなく、練習も視察しクラブ関係者とも懇談をしている。9月の予選は移籍直後で、チームに溶け込む時間を配慮して招集を見送ったが、監督も「彼は短い期間で(チームの)ゲームメーカーとして存在感を示している。実力的にはA代表に食い込んでもらわないといけない選手の一人」と、大きな期待を寄せる。

 カタールでの中国戦に招集しながら起用しなかったフランス2部、トゥールーズに移籍し好調を維持するFWのオナイウ阿道(25)の試合も、監督は現地で視察している。田中やオナイウといった新しい代表選手が存在感を示せれば、攻撃陣3人が不在となるアクシデントを来年まで続く予選のバネにも変えられるチャンスだ。

過去の対戦は優位だが、難敵のサウジアラビア、豪州

W杯アジア2次予選のキルギス戦で、ボールを競り合うオナイウ阿道=2021年6月15日、パナソニックスタジアム吹田
 7日に対戦するサウジアラビアは、初戦で日本を破ったオマーンを下して9月に2勝。初戦でいきなりつまずいた日本を後目にスタートダッシュに成功した。④過去の対戦では日本の9勝1分4敗と優位に立つが、06年、17年とサウジでのアウェーで連敗を喫している。カタールのように最新の冷房装置はなく、典型的な中東の気候だけに、欧州から招集される選手たちにとっては厳しい環境だ。

 また、過去のW杯最終予選で中東での過酷な試合を経験しているのは、吉田麻也らベテラン勢でこれも不安材料だろう。

 アジアでの強力なライバル・豪州も2試合に勝利して首位に立つ。対戦成績でも11年以降、4勝3分と日本が優位に見える。しかし、試合の多くが1点差と僅差。また、12日の試合に向けて、シドニーで試合を行う豪州のほうは時差がなく、むしろアウェーに適応しやすいのに対して、日本は環境も時差も負ってサウジから帰国する。ホームでありながら逆ハンディを負う状態にも懸念はある。

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