倉沢鉄也(くらさわ・てつや) 日鉄総研研究主幹
1969年生まれ。東大法学部卒。(株)電通総研、(株)日本総合研究所を経て2014年4月より現職。専門はメディアビジネス、自動車交通のIT化。ライフスタイルの変化などが政策やビジネスに与える影響について幅広く調査研究、提言を行う。著書に『ITSビジネスの処方箋』『ITSビジネスの未来地図』など。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
~大相撲とは何か。不勉強の自称有識者は去って出直せ~
それらを批判する側の致命的な欠落「大相撲の歴史伝統とは何か、変わっていいものといけないものは何か、の定義がないこと」を解決するために、「大相撲の継承発展を考える有識者会議」が運営され2021年4月に提言書がまとめられたのではないのか。この報告書には「(個人資産に基づく)相撲部屋運営のガバナンスの必要性」など重要な指摘もあるが、少なくとも白鵬引退のタイミングでその言動に対する評価を前提に読む限り“驚愕の稚拙さ”“もみ消すべき性質のアウトプット”と言わざるを得ない。とりわけ「入日本化(にゅう・にほんか)」と名付けた伝統文化保持のコンセプトは、国際問題や人権問題の火種となる可能性すらある危険な記述が多数含まれている。
そして各界有識者と希少なヒアリング結果をもとに紡いだ歴史伝統の定義は、「守るべき伝統を再確認する委員会、を設け・・・統一した見解を示すなど・・・取り組みが望まれる」としてギブアップしている(同提言書P.24)。たたき台の暫定案を示すことが、この「大相撲の継承発展を考える」提言書の最低限のミッションのはずだ。
そもそもこのような報告書を委員会形式で作成しこの品質で世に出してしまうこと、それを制御できていない事態は、多くの政府等委員会に委員または事務局として参加したシンクタンク研究員として、想像を絶する。