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高校生が「ソーシャル・ビジネス」で地域を変える

商品開発、事業経営、全国に広がる取り組み

大矢雅弘 ライター

地域を担う、高校生の活躍

 地域の活性化やまちづくりの担い手として、高校生の活躍が全国で広がっている。

 地域が抱えるさまざまな問題をビジネスの手法で解決していこうとする「ソーシャル・ビジネス」を導入した取り組みで、一般社団法人「未来の大人応援プロジェクト」(三重県伊勢市)が高校生の活動を後押ししている。そんな活動を教育現場の授業に取り入れ、地域の課題解決に貢献する人材の育成につなげようという動きも具体化し始めている。

 同プロジェクト実行委員会が毎年夏に開催する「全国高校生SBP(ソーシャル・ビジネス・プロジェクト)交流フェア」が今年も7月31日から8月22日まで開かれた。「高校生の〝伸びしろ〟は、そのまま日本の〝伸びしろ〟だ!」を合言葉に、生徒たちが取り組んだことを発表し、開発した商品を紹介しながら交流し、互いに評価しながら向上していくことをめざす場になっている。

 6回目となる今回は、コロナ禍のため、昨年に続いて2度目のオンライン開催となり、参加者をウェブ会議システムでつないで行われ、8月22日の交流会には北海道から宮崎県までの31団体が参加した。

オンラインで開かれた「全国高校生SBP交流フェア」の参加者による集合写真=2021年8月22日、未来の大人応援プロジェクト提供

 

「防災非常食」、作る過程での気づき

 高校生の視点による多様な取り組みを発表する「SBPチャレンジアワード」の本選(7月31日、8月1日)には19団体が出場し、6団体が決勝に進んだ。8月22日に行われた決勝では各団体が20分かけて、動画での活動紹介と、日本総合研究所の藻谷浩介主席研究員ら多彩な分野の審査員との質疑応答をした。

 最高賞の文部科学大臣賞には、防災非常食の開発とオリジナルのたい焼き「あまりん焼き」に取り組んだ熊本県天草市の天草拓心高校SBPが選ばれた。

天草拓心高校SBPの「防災非常食」のパッケージ=未来の大人応援プロジェクト提供
 防災非常食は、三重県南伊勢町の南伊勢高校SBPとの交流から生まれた。

 南伊勢高校は、海岸に面しており、南海トラフ地震に備える防災対策にデジタル防災マップなどを作成している。一方、熊本でも近年、熊本地震のような大きな災害が増えている。天草拓心高校には、缶詰を作る技術を持った学科があることから、防災と缶詰を組み合わせた「防災非常食」をつくるアイデアが出てきた。

 非常食の中身は、「栄養価が高く、子どもからお年寄りまで食べやすいものを」といった検討を重ね、天草の郷土料理の「せんだご汁」にした。せんだご汁は、すりつぶしたサツマイモと、サツマイモでんぷんを合わせて作った団子と野菜などさまざまな具材が入った汁物だ。

 災害時に食べるものとして開発を始めたが、試作を繰り返すうちに、目的が変わっていったという。「災害が起こらないほうがいい。防災非常食は食べられずに済むことが一番いい」「防災非常食を防災訓練の際に食べて、多くの人たちに災害が起きずに無事で過ごせる喜びを感じてほしい」との思いを強くしていった。

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