大矢雅弘(おおや・まさひろ) ライター
朝日新聞社で社会部記者、那覇支局長、編集委員などを経て、論説委員として沖縄問題や水俣病問題、川辺川ダム、原爆などを担当。天草支局長を最後に2020年8月に退職。著書に『地球環境最前線』(共著)、『復帰世20年』(共著、のちに朝日文庫の『沖縄報告』に収録)など。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
商品開発、事業経営、全国に広がる取り組み
高校生の視点による多様な取り組みを発表する「SBPチャレンジアワード」の本選(7月31日、8月1日)には19団体が出場し、6団体が決勝に進んだ。8月22日に行われた決勝では各団体が20分かけて、動画での活動紹介と、日本総合研究所の藻谷浩介主席研究員ら多彩な分野の審査員との質疑応答をした。
最高賞の文部科学大臣賞には、防災非常食の開発とオリジナルのたい焼き「あまりん焼き」に取り組んだ熊本県天草市の天草拓心高校SBPが選ばれた。
防災非常食は、三重県南伊勢町の南伊勢高校SBPとの交流から生まれた。
南伊勢高校は、海岸に面しており、南海トラフ地震に備える防災対策にデジタル防災マップなどを作成している。一方、熊本でも近年、熊本地震のような大きな災害が増えている。天草拓心高校には、缶詰を作る技術を持った学科があることから、防災と缶詰を組み合わせた「防災非常食」をつくるアイデアが出てきた。
非常食の中身は、「栄養価が高く、子どもからお年寄りまで食べやすいものを」といった検討を重ね、天草の郷土料理の「せんだご汁」にした。せんだご汁は、すりつぶしたサツマイモと、サツマイモでんぷんを合わせて作った団子と野菜などさまざまな具材が入った汁物だ。
災害時に食べるものとして開発を始めたが、試作を繰り返すうちに、目的が変わっていったという。「災害が起こらないほうがいい。防災非常食は食べられずに済むことが一番いい」「防災非常食を防災訓練の際に食べて、多くの人たちに災害が起きずに無事で過ごせる喜びを感じてほしい」との思いを強くしていった。