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2021年の大谷翔平は何が偉大だったのか?~本塁打王・二桁勝利は未達成。でも……

大リーグの日本人打者の系譜、大リーグの歴史、米球界のあり方などから見える成果とは

鈴村裕輔 名城大学外国語学部准教授

「非力な日本人打者」のイメージを超えた

 2001年のイチロー(シアトル・マリナーズなど)に始まった大リーグにおける日本人打者の系譜はたどると、期待と失望を繰り返しながら、評価がじわじわ下がってきた過程でもあった。

 走攻守のいずれにも優れ、MVPを獲得するとともに、打者として野球殿堂に選出されるための重要な指標である通算3000本安打を記録したイチローや、安定した成績を残し続けた松井秀喜(ニューヨーク・ヤンキースなど)は、「日本最高の打者」や「日本が誇る強打者」の面目をほどこした。

 だが、それ以外の打者の多くは、単年では優れた打撃成績を残しても、複数年にわたり一定の水準を保つことが出来なかったり、大リーグで求められる長打力を示せなかったりしたまま、そのキャリアを終わることがほとんどだった。

 なにより、日本人大リーグ選手の年間最多本塁打の記録が2004年の松井による31本塁打であり、昨年まで年間20本塁打以上を記録したのが松井、大谷の両名のみであったことは、大リーグの関係者に「日本人打者は非力」という印象を与えるには十分だった。

 そんななか、松井の年間最多本塁打記録を17年ぶりに更新するだけでなく、40本塁打以上をはなって「長距離打者」の仲間入りを果たし、「非力な日本人打者」というイメージを超えたのが、今季の大谷だった。

拡大右越えに46号となる先頭打者本塁打を放つエンゼルス・大谷翔平=2021年10月3日、米シアトルのT―モバイルパーク

打撃術・投球術の進化の一歩先を行く「二刀流」

 大リーグの特徴は、とにかく「記録」が好きということだ。実際、様々な切り口から既存の「記録」を分析する。

 大谷についても、たとえば「47本塁打を放てば、史上初めて『47本以上の本塁打と25盗塁』が達成される」といった報道がなされるのは、どうすれば従来とは異なる視点から記録を眺められるかを考える米国らしさが現れているとも言えるだろう。

 そして、2021年に注目された記録のひとつが、「1918年のベーブ・ルース以来の二桁本塁打、二桁勝利」である。

拡大マリナーズ戦に先発したエンゼルスの大谷翔平=2021年9月26日、米アナハイムのエンゼルスタジアム

 シーズン最多本塁打や通算本塁打数の記録が破られ、通算打率や通算打点などでも他に優れた選手がいるなか、今もなお人々から愛され、大リーグの象徴とも目されるのがベーブ・ルースである。

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筆者

鈴村裕輔

鈴村裕輔(すずむら・ゆうすけ) 名城大学外国語学部准教授

1976年、東京生まれ。名城大学外国語学部准教授、法政大学国際日本学研究所客員所員。法政大学大学院国際日本学インスティテュート政治学研究科政治学専攻博士課程修了・博士(学術)。専門は比較文化。主著に『メジャーリーガーが使いきれないほどの給料をもらえるのはなぜか?』(アスペクト 2008年)、『MLBが付けた日本人選手の値段』(講談社 2005年)がある。日刊ゲンダイで「メジャーリーグ通信」、大修館書店発行『体育科教育』で「スポーツの今を知るために」を連載中。野球文化學會会長、アメリカ野球愛好会副代表、アメリカ野球学会会員。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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