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五輪直後の世界体操が目指す新たな価値~社会貢献と産業の創出を

観客フル収容―コロナと向き合うスポーツ界の青写真を描く大会に

増島みどり スポーツライター

競技会を視聴率、マーケティングで評価する時代は終わり?

 FIG会長で、現在3人となった日本のIOC(国際オリンピック委員会)理事も務める渡辺氏は五輪前の昨秋、「東京へのモデルケースにしたい」と、米国、中国、ロシアと日本の4カ国による「友情と絆の大会」を主催し、コロナ禍から一早く、国際競技会の正常化に足を踏み出した。

 そして今回は、五輪後に目を向け「大きな競技会の在り方や、スポーツ界にとって試金石となる大会にしたい」と話す。

拡大大会にあわせて北九州市が進める「世界体操・新体大会にあわせて北九州市が進める「世界体操・新体操SDGs100本プロジェクト」

「SDGs」を開催意義に―資源再利用・住民参加イベント続々

 渡辺会長は、東京五輪を含むこれまでの競技大会で開催側が主に発信してきた「スポーツで夢や感動、希望を」といったメッセージに加え、新しい価値を見出すために今大会を位置付ける。スポーツ大会を、観客動員によるチケットの売り上げ、マーケティングによって、成功か失敗を判断するだけではなく、「SDGs」(持続可能な開発目標として17の世界的目標と169の基準を設置したもの)を、大会開催の意義に明確に加えた。

 今大会でもモバイル端末や小型家電から資源を再利用しメダルを作成。メダルをかけるリボンも、リサイクル衣料から取った再生糸で編んでいる。北九州市は、東京五輪で問題になった弁当などの食料廃棄にも取り組むため、食べ残しを「たい肥」に変えるプロジェクトを含み10、11月を「SDGsマンス」に制定。市内の様々な場所で、市民も100以上の取り組みに参加する。

拡大世界体操・新体操選手権のメダル。北九州市の技術を活かし、資源回収事業で集められた資源が使われた=北九州市提供
拡大バスのつり革と体操のつり革の大きさを比較する西日本工業大学の学生が制作した車内ポスター=2021年9月16日、北九州市

「社会貢献と産業革命」に多彩なプログラム

 渡辺会長は、ポスト東京五輪のスポーツ大会には、「社会貢献と、スポーツがもたらす産業革命が求められるのではないか」と理念を掲げる。FIGも初めて、大会期間中に「サンテジム」と名付けたジムを市内に設置し、食事と運動、社会コミュニティ参加を3本柱に、高齢化社会の大きな課題「フレイル」(加齢による運動機能の衰え)の予防に貢献するプログラムを立ち上げた。

拡大大会にあわせて北九州市が進める「世界体操・新体操SDGs100本プロジェクト」のプログラム例
 市民の多くがこのプログラムに参加することで、「新しいスポーツ関連の産業スタイルが生まれるだろう」と、会長は期待を寄せる。集まった健康データを、開催都市が大会後にも生かせれば、フレイル予防から医療費の削減、地域の活性化にもつなげられる。

 SDGsに含まれる「ジェンダー推進」のため、大会中、現役女子選手や、田中理恵、畠山愛理(両氏とも大会組織委員会理事)の元選手によるジェンダーに関する勉強会も予定され、中継局のテレビ朝日も系列局を含め、男性が多い現場で男女の参加率を見直す徹底ぶりだ。

拡大選手の姿をあしらったラッピングバス=2021年9月16日、北九州市小倉北区

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筆者

増島みどり

増島みどり(ますじま・みどり) スポーツライター

1961年生まれ。学習院大卒。84年、日刊スポーツ新聞に入社、アマチュアスポーツ、プロ野球・巨人、サッカーなどを担当し、97年からフリー。88年のソウルを皮切りに夏季、冬季の五輪やサッカーW杯、各競技の世界選手権を現地で取材。98年W杯フランス大会に出場した代表選手のインタビューをまとめた『6月の軌跡』(ミズノスポーツライター賞)、中田英寿のドキュメント『In his Times』、近著の『ゆだねて束ねる――ザッケローニの仕事』など著書多数。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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