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種子島のサンゴ礁、ウミガメに異変が――原因を探る地元高校生たちの1年間の奮闘

環境保護から「海の砂漠化」の調査、そして郷土愛の醸成へ

奥田進一 拓殖大学政経学部教授

「先生、それはダメだ!絶対に反対だ!ウミガメは……害獣だ!」

 いつもは冷静沈着な漁師の古川正則さんが、鬼のような形相でまくし立てた。同席していた他の漁師さんたちもこぞって、「網を食い破られて困っている!」、「護らんでもたくさんおる!」、「ますます獲物が減る!」と激高気味に叫ぶ。とくに、秋に行われる種子島名物アサヒガニの網カゴ漁における被害が甚大だという。

ウミガメによる漁業被害2020年11月1日、古川正則氏撮影拡大ウミガメによる漁業被害2020年11月1日、古川正則氏撮影

 地元住民、とりわけ漁業者の同意が得られない以上、そのような条例を制定することは絶対にできない。まずは、漁師さんたちの意見をよく聞き、実地調査をしっかりと行って、さまざまな検討を加える必要がある。他方で、ウミガメを駆除しよう、あるいは保護する必要はないという話にはならない。

 市民に問いかけてはどうか。自然とそのような意見が出され、それならばシンポジウムを開催しようということになった。コロナ禍ではあったが、一般市民向けのオンライン開催は技術的に不可能であり、結局、手探りであらん限りの感染症対策を講じて、2020年11月15日に西之表市民会館で「ブルーエコノミーと種子島の漁撈文化」というシンポジウムを開催した。私も、「わが国のウミガメ保全に関する条例の動向」と題する報告を行うとともに、ファシリテーターを務めた。前述の古川さんにも無理をいって登壇してもらい、ウミガメによる漁業被害について詳しく語ってもらった。

 当日は、200名を超える市民が詰めかけ、ウミガメが漁業被害をもたらしているという古川さんの話に強い衝撃を受けた。そのなかに、中種子町に所在する県立種子島中央高校の永野由美子先生(現・鹿児島市立玉龍高校教諭)とその生徒たち数名がいた。彼らは、古川さんがさらに語った「磯焼け」という話に興味を覚え、勇気を奮って質問の手を挙げたが、残念ながら時間切れで指名されなかった。

「生徒たちをこのまま不完全燃焼で終わらせてはいけない」

 シンポで質問できずに悶々として帰宅した生徒たちを慮り、永野先生は見ず知らずのシンポ登壇者の連絡先を調べ、たまたまホームページ上でメールアドレスを公開していたある登壇者にメールを送った。このメールが、私のところに転送されて来た。じつは、私はシンポから10日を空けずして、別件で種子島を訪問中であった。さっそく永野先生に連絡をとり、高校生たちと直接面会して「磯焼け問題」についてじっくりと語り合う時間を持った。

 彼らは、「総合的な探求の時間」のテーマとして「ウミガメ保護」を選び、そのために何ができるのかを模索中であった。当初は、ウミガメをモチーフにしたお菓子を文化祭などで販売して、その売り上げをウミガメ保護活動の団体に寄付しようと考えていたという。しかし、それではウミガメ保護とは直接にはつながらない。考えあぐねていた時に、前述のシンポジウムが開催されると知って参加したのだという。そこで初めて聞いた「ウミガメと漁業者との競合」、そして「磯焼け」という問題に触れ、その原因を探ってみようということになった。

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筆者

奥田進一

奥田進一(おくだしんいち) 拓殖大学政経学部教授

1969年川崎市生まれ。1995年3月早稲田大学大学院法学研究科修了。放送大学客員教授、早稲田大学社会科学総合学術院客員教授、西東京市建築紛争審査会委員などを兼務。著書に『環境法へのアプローチ』『中国の森林をめぐる法政策研究』『環境法のフロンティア』『共有資源管理利用の法制度』『森林と法』『後藤新平の発想力』など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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