メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

新生なでしこジャパン始動~23年W杯とパリ五輪見据え「世界一奪還」宣言

現場を支える体制が定まらぬままの船出。年明けからW杯出場権かけアジア杯に挑む

増島みどり スポーツライター

新チームで再始動したなでしこジャパン候補のトレーニングキャンプがスタートした=2021年10月18日、千葉市美浜区の高円宮記念JFA夢フィールド、JFA公式Webサイトから

池田太新監督の初合宿で約2カ月半ぶりに始動 いい表情だったと手応え

 急に気温が下がった18日、東京オリンピックでスウェーデン(7月30日、1-3)に敗れて以来約2カ月半ぶりに、サッカー女子日本代表「なでしこジャパン」が池田太監督(51)のもとスタートを切った。9月に始まった「WEリーグ」で、5連勝と首位を走るINAC神戸から最多の6人が選出され、東京五輪代表も10人呼ばれたが、今回は海外でプレーする選手は含まれていない。

東京五輪でスウェーデンとの準々決勝に敗れた日本の選手たちと高倉麻子監督(右端)=2021年7月30日、埼玉スタジアム
 週末に、プロリーグ「WEリーグ」が行われたため、練習は1時間、疲労回復に重点を置いた軽いメニューのみに。選手たちの笑い声が終始ピッチに響き、和やかな空気のなか初日を終えた。16年に高倉麻子前監督(53)が就任した最初の練習は、16年リオデジャネイロ五輪出場権を逃した後だっただけに緊張感が漂っていたのとは対照的だった。

過去の代表が成し遂げた功績を胸に刻む

 池田監督は練習後にオンラインで取材対応し、練習前に、ミーティングで過去の代表選手たちが成し遂げてきた功績を振り返る映像を見せたと明かした。今合宿を初の活動として、来月には海外遠征での親善試合が予定される。

 新生チームのキャプテンについては「まだ決めていない。いつまでに決める、といったことも予定しない」と、ドイツのバイエルン・ミュンヘンでプレーする熊谷紗希主将に配慮し、当面、パリ五輪までチームを引っ張る「顔」は決めないという。

選手と対話する池田太監督=2021年10月18日、JFA公式Webサイトから

全力プレー・仲間への好影響・相乗効果

 監督は「練習前になでしこの未来を作っていこうという話をした。みんながいい表情で動いてくれた」と手応えを表現。代表選考の基準について「チームにプラスアルファの影響を与えられる選手かどうか。全力でプレーできるかどうかは大切にする。プラス、仲間にいい影響を与え、よりよい相乗効果が生まれるような、化学反応を起こせるかが大事なポイントになる」と、24日までの合宿で選手たちの組み合わせを確認するようだ。22日には男子高校生との練習試合を予定する。

池田太新監督の就任後初めてとなる、なでしこジャパン候補のトレーニングキャンプ。23人の選手が集い、7日間にわたり活動する=2021年10月18日、千葉市美浜区の高円宮記念JFA夢フィールド、JFA公式Webサイトから

現場を支える女子委員会の体制はいまだに決まらず

 1日に池田監督が就任会見を行い、14日に初合宿に臨むメンバー、宮本ともみコーチら3人のスタッフが日本サッカー協会から発表された。スタッフはなでしこジャパンと、年代別のU-19日本代表を「兼務」する形となる。

 「現場」がスタートを切ったのに対し、東京五輪まで女子の強化を担当し、現場を支え、普及活動を進めてきた女子委員会の新しい体制、メンバーはいまだ決定されていない。

 池田監督は「現時点で今井(純子)委員長と今後のサポート体制などを話しており、特に問題は感じていない」とするが、五輪後、今井純子委員長と手塚貴子副委員長はともに、高倉監督の任期満了による退任に伴い、理事会に対して「五輪の結果が出なかった責任」を理由に辞任を申し出ている。

なでしこジャパン(日本女子代表)の新監督に就任し、記者会見する池田太氏=2021年10月1日、JFA公式Webサイトから

退任する旧正副委員長が新体制づくりを進める事態に

 サッカー協会・田嶋幸三会長も2人との間では辞任を了承。しかし新監督の人事、コーチングスタッフ、技術委員会の正・副新委員長が決定するまで続けるよう指示し、理事会は辞任の意向をいったん預かった。退任すると決まっている旧委員長、副委員長が新体制を選び、支援する人事を進める現状に違和感はある。

 本来なら、東京五輪の反省、課題、将来の展望を総括するなかで監督の交代の必要性が議論され、どういう手腕が求められるのか明らかになる。高倉監督を任命した旧女子委員会が作成する詳細な「テクニカルレポート」を総括としたうえで、新しい強化体制のもと、次期監督候補を選ぶという順序になるはずだ。

 パリを目指そうという選手、監督、スタッフの「乗客名簿」は先ず出した。しかし彼らを目的地に運ぶために一体どの船で、針路を示す地図はどれか、航路がはっきりしない。新生なでしこジャパンの船出に何かが足りないように感じる理由だ。

監督・スタッフ全員が“兼務” 1チーム2カテゴリーの難題克服が急務

 15日、AFC(アジアサッカー連盟)は、来年行われるU-20、U-17と2つのユース世代のW杯出場権を争うアジア予選を、コロナ禍を理由に中止とし、代わりに一昨年の成績上位チームを、2つのW杯出場国として発表した。

これにより、22年U-20W杯コスタリカ大会は日本と北朝鮮と韓国、22年U-17W杯インド大会は日本と北朝鮮、それにホスト国インドの3チームが出場。なでしこジャパンの「妹たち」が、2つの年代でW杯優勝を狙う。

・・・ログインして読む
(残り:約782文字/本文:約2796文字)