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【52】くらしと産業に不可欠な「水」の複雑な仕組み

耐震安全性を総合的に考えたい

福和伸夫 名古屋大学減災連携研究センター教授

水の大切さ、入り組んだ供給の仕組み

 水は、命や生活、生業に欠くことができない。

 アジアモンスーン地帯に位置する日本は、季節風が脊梁山脈にぶつかることで、水資源に恵まれている。しかし、急峻な地形故に、河川勾配が急で短く、ダムの容量にも限界があるため利水は容易ではない。また、洪水や土砂災害に対する治水も重要である。

 人々はかつて、主に湧水を使っていたが、その後、井戸やため池、用水路などを作って、水の取得法を拡大し、生活圏を広げてきた。

 現在では、河川につくられた利水ダムや用水路、水道の整備により、日本中、どこでも水を利用できるようになった。そのためか、多くの国民は、普段は水のありがたさを忘れがちだ。だが、大災害が起きれば断水する。水供給が長期間途絶すれば、人々は命の危険にさらされ、生活や社会も持続できなくなる。

 くらしや産業を支えている水をめぐる社会的な仕組みは複雑だ。しかし、生活する中で、そのことを意識している人はごく少ないだろう。今回は、これをひも解いていきたい。

和歌山市の紀ノ川にかかる「六十谷(むそた)水管橋」(上水道)が破損し、約6万世帯が断水した。水道管を吊っている部材に破断が見つかった=2021年10月3日撮影

川から引かれる「三種類」の水

 水の主な供給源である河川の管理は、国土交通省が所管している。

 川の水は、用水路や導水管を通って浄水場に導かれ、配水池を介して、必要なところに供給される。ダムに貯めた水の利用には国土交通省や水資源機構などが関わっている。

 日本の水は、用途によって異なるルートで供給されている。所管する役所や管理組織はそれぞれ異なり、入り組んでいる。そのため、全体像を把握するのが難しい。

 以下、簡単に整理していこう。

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