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アスリートのメンタルヘルスにどう向き合うか。五輪イヤーが残した大きな課題

タブー視されてきた深刻な被害 選手と競技組織、ファン、メディアを含めた取り組みを

増島みどり スポーツライター

拡大大坂なおみ選手のインスタグラムの画面。コートでほほえむ写真とともに、「ちょっとなまった感じはするけど、コートに戻って来られて良かった。私は親切なメッセージをくれた全ての皆さんに感謝を伝えたい。私は本当に感謝しています」と投稿された

大坂とバイルス、トップ選手2人が訴えた「心の健康」

 11月に入り、メンタルヘルスの問題で無期限の休養をしていた大坂なおみ(24=日清食品)が笑顔でテニスコートに戻ってきた。

 自身のインスタグラム(5日、@naomiosaka)を更新し、「ちょっと(テニスの腕が)なまった感じはするけれど、コートに戻って来られて良かった」と投稿。9月5日に、四大大会のひとつで2度の優勝を果たした全米オープン3回戦で、ランキング73位の18歳、フェルナンデス(カナダ)に敗退し、試合後の記者会見で「勝っても嬉しくない。自分が何をしたいのかを理解し、考える時が来たように思う」と、涙ながら明かしていた。

会見ボイコットした大坂の告白―競技や立場を越え共感

 トップアスリートとして競技の頂点に上り詰める様子は報道される一方、プレッシャーとストレスにメンタルヘルスがどれだけ深刻な被害を受けているかは長くタブー視されていた。

 大坂は今年6月、全仏オープンの会見をボイコットする一因として「2018年に全米オープンで優勝して以来、メンタルヘルスの問題で長い間、不調に悩んできた」とオープンに。その告白はテニス選手や女性アスリート、プロにとどまらず、驚くほど多くの国、競技、年代の選手たちの共感を集める結果となった。

拡大東京五輪では聖火の最終点火者を務めた大坂なおみ選手=2021年7月23日、国立競技場

五輪を競技途中で棄権したバイルス―問題伝えた姿勢に称賛

 今夏の東京五輪では、この最高の舞台で金メダルを4つ獲得してきた女子体操のスター選手、シモーン・バイルス(24=アメリカ)が、団体総合の競技途中で「心の健康を何より優先するため」と棄権。五輪会場で棄権する勇気を持って問題を伝えた姿勢に、同じ体操選手たちからだけではなく、世界的ミュージシャンやサッカー選手からも称賛の声が寄せられた。

 選手たちがメンタルヘルスにどう向き合い、ファン、メディアを含めた周囲がどう関わって支援すべきなのか。とても大きなテーマが、改めて提起された年となった。

拡大シモーン・バイルス選手の棄権は、米国の新聞各紙でも大きく取り上げられた=2021年7月28日、米ニューヨーク

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筆者

増島みどり

増島みどり(ますじま・みどり) スポーツライター

1961年生まれ。学習院大卒。84年、日刊スポーツ新聞に入社、アマチュアスポーツ、プロ野球・巨人、サッカーなどを担当し、97年からフリー。88年のソウルを皮切りに夏季、冬季の五輪やサッカーW杯、各競技の世界選手権を現地で取材。98年W杯フランス大会に出場した代表選手のインタビューをまとめた『6月の軌跡』(ミズノスポーツライター賞)、中田英寿のドキュメント『In his Times』、近著の『ゆだねて束ねる――ザッケローニの仕事』など著書多数。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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