新聞報道の比較から被害の実情をみる
2021年11月18日
2021年10月7日に起きた千葉県北西部の地震から1カ月余が経った。
この地震の規模はM5.9、震源の深さは75キロだった。関東地方は、北アメリカプレートの下にフィリピン海プレートが沈み込み、さらにその下に太平洋プレートが潜り込んでいる。この地震はフィリピン海プレートと太平洋プレートの境界で起きたため、震源がやや深かった。
最大震度は5強で、埼玉県の川口市と宮代町、東京都の足立区で観測された。東京都内で震度5強を観測したのは、2011年の東日本大震災以来である。強い揺れは、震源の千葉県北西部の西側に広がり、旧利根川沿いの軟弱地盤での揺れが目立つ。
長周期地震動階級(※)は、千葉県浦安市日の出と東京国際空港で2が観測された。
※:長周期地震動階級とは、地震時に高層ビルの中にいる人の体感や室内の様子で行動の困難さの程度を4段階に区分した揺れの大きさの指標。「1」=ほとんどの人が揺れを感じ、驚く人もいる▽「2」=大きな揺れを感じ、何かにつかまらないと歩きにくいと感じる▽「3」=立っていることが困難▽「4」=立っていることができず、這わないと移動できず、揺れに翻弄される。
高層ビルが集中する東京の千代田区大手町や新宿区西新宿の震度は4、長周期地震動階級は1だった。一般に、やや深い位置で起きるM6クラスの地震では長周期の揺れは余り放出されないが、東京は厚い堆積層に覆われているため、長周期の揺れが増幅されやすい。
消防庁によると、10月15日時点で分かっている被害は、重傷者6人、軽傷者41人、住家火災1件、袖ケ浦市の製油所火災、川崎市の製油所でエチレンガス漏洩、足立区の「日暮里・舎人ライナー」の車両が脱輪などだった。
2018年大阪府北部の地震で、6万3千台余のエレベーターが停止し、346件の閉じ込めがあったことを考えると、閉じ込め件数は微少に留まった。震源が深く、P波を検知してから主要動が到達するまでに10秒以上の猶予があったことが幸いしたと考えられる。万が一、M7クラスの直下地震が地下浅部で発生すれば、東京都内にある17万台のエレベーターの多くで閉じ込めが発生すると懸念される。エレベーターの直下地震対策は喫緊の課題である。
水道の不具合も多かった。空気弁が開いて各所で漏水が発生し、千葉県市原市では川にかかる水管橋が破損した。一方で、都市ガスの損傷は報告されていない。また、停電件数も都内で250件など一部に留まった。ライフラインの地震対策における官民の差が窺える。
千葉県北西部の地震は、20年前後の間隔で繰り返し発生している。
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