赤木智弘(あかぎ・ともひろ) フリーライター
1975年生まれ。著書に『若者を見殺しにする国』『「当たり前」をひっぱたく 過ちを見過ごさないために』、共著書に『下流中年』など。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
「♪ 朝一番早いのは パン屋のおじさん」
と歌う分にはほのぼのとした童謡でも、それが毎日続く長時間労働の一端であると考えると、地獄のような内容に聞こえてくる。
兵庫県の人気洋菓子店「パティシエ エス コヤマ」が、約半数の社員に月100時間を超える時間外労働をさせていたとして、労働基準監督署から2度にわたる是正勧告を受けていたというニュースがあった。また、社内調査では一部の従業員に残業代の未払いが発覚したとのことだ。
同社はホームページに「労働基準監督署からの是正勧告への対応について」という文書を掲載し、労働環境改善の取り組みと時間外手当を支払っていくことを約束している。
月に100時間を超える残業は、週休2日とすると、毎日4〜5時間程度である。基本の労働時間が8時間、休憩を1時間、通勤時間が往復1時間とすれば、仕事のために占有される時間が1日15〜16時間ということになる。なお1日は24時間である。
これで従業員たちが人間らしい生活を送っていたとは思えず、仕事以外は食事して風呂に入って(酒飲んで)眠るくらいのことしかできなかったのではないだろうか。
法的にも労働基準法・36協定では原則、月45時間、年360時間以内という残業の上限が決められており、たとえ特別条項があったとしても、月100時間以上の残業は違法となっている。
また1カ月100時間の残業は「過労死ライン」でもあることから、このラインを超えて働かせていた以上、会社側は社員の安全管理の義務を怠っていたと言えるのである。
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