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子どもの小さな声を大きくして届けるマイクのような活動~子どもアドボカシー(上)

設立の理由と、児童養護施設への訪問活動

NPO法人子どもアドボカシーセンターOSAKA 奥村仁美・藤田由紀子・栄留里美

(2)「子どもは未完成」という思い込みが葛藤を生む~市民アドボケイトの思い

藤田由紀子(ふじたゆきこ)
NPO法人子どもアドボカシーセンターOSAKA 市民アドボケイト
公益社団法人子ども情報研究センター 会員
施設で暮らす子どもにも“自分はたった一人の大切なかけがえのない存在”だと気づいてもらいたいと思い活動している。

 市民が子どもの立場に立ち切り、子どもの声を聴くアドボケイトに魅かれて2017年に養成講座を受講し、いまに至る。ここで取り上げるエピソードは、施設を定期的に訪問しているがゆえに遭遇できた個別アドボカシーの例であり、あくまで子ども側の話をもとに述べる。

爆発した怒り、自身が考える解決のイメージを聴く

 毎週のように訪問を重ねるようになったある日、誰かが部屋の中で怒りを爆発させている声が聞こえてきた。別室に居た私は、大きな物音に驚き、何事だろうと緊張した。この衝動の原因は、AさんとB職員との衝突だった。

 しばらくたって静かになった後、その部屋を訪ねてみた。「話を聴かせてもらってもイイ?」とAさんに許可を得て、その時何があってどのような気持ちになったのか聴かせてもらった。AさんはあることをきっかけにB職員から一方的に自室で反省するように言い渡され、その後いきなり部屋で見ていたTVを取り上げられた。そのできごとに納得のいかないAさんが、壁を蹴るなどして怒りを爆発させていたのだ。

 その話をもとにAさんの考える解決イメージを聴かせてもらうことができた。それは、Aさんが伝えたいことをC職員に聴いてもらうことだった。

何が不満なのか、一緒にまとめる

 この日C職員に伝えたことで、衝突したB職員との関係がすぐに解決したわけではなかったが、Aさんから話を聴かせてもらう中で、D職員に対しても不満に思っていることがあることも分かった。その内容については、後日訪問した日に下記の様にAさんと一緒にまとめることが出来た。


1. 私にはいつも、言い方がきついねん。「○○した?」とやさしく言ってほしい。
2. 「消すな‼」ブチっ。じゃなくて、「TV消していい?」と聴いてほしい。
3. 「これからは気を付けてね。」とやさしくいってほしい。
4. 「謝ってー!」と一方的に言われるので、「どうしたの?」とまず話を聴いてほしい。
5. その後、「謝ろか」と言ってもらえると「わかった」ってなる。
6. 声のボリュームを小さく、テンポは遅めに、優しいトーンで声を掛けてほしい。

以上

まとめた意見を、伝えたい人に伝える

 この時Aさんは、「職員からこんな風に言ってもらえると、イライラせずに生活することが出来る。」と教えてくれた。

 アドボケイトはこのように本人が伝えたいことを一緒にまとめ、伝えたい人に伝える『意見表明支援』を行う。この意見表明については、施設長などの役員と協議する検討会でアドボケイトがAさんの声として代弁することになり、その後、職員会議でも取り上げられた。後日Aさんに確認すると、職員の対応が変わりストレスが軽減されたとの報告を受けることができた。

拡大子どもアドボカシーセンターOSAKA提供

子育てで経験した私の葛藤、原因は「子ども観」に

 人手が足りず雑務の多い職員が、小さなことにも気持ちが高ぶることは多いだろう。そのうえ、思いが強くて熱心な職員ほど子どもとの衝突も起こるだろう。集団生活ではトラブルが多発するので、自然と細かな事にも多くのルールが出来てしまう。将来苦労をさせたくないと思えば、職員の言葉もきつくなりがちだ。施設を出た後も近くで関わり続けたいと思ってもそうはいかないのだから、なおさらだろう。

 実は、これらは私自身も子育て中に経験した葛藤でもあった。当時の私は、自分の都合やルールで子どもを管理してしまっていた。しかし、その時の私の葛藤や苦しみの原因は子どもではなく、私が持つ「子ども観」の問題だった。簡単に言うと子どもは未完成な人間だというおとな側の思い込みだ。この思い込みを問い直し、子どもがおとなの決めたルールに縛られることなく安心して暮らせる社会を実現したい。

「正しさとは何か」を教えてくれるのは子ども

 私はこのアドボケイトの活動と出逢い、正しさとは何かを教えてくれるのは子どもだと確信している。困った時、子どもに聴けば歯に衣着せぬ斬新な意見を聴かせてくれるので興味深い。子どもは、信頼に値するおとなをしっかり見極めている。

 時おり遠くを見つめるその瞳の奥で、Aさんはどんな思いを秘めているのだろうか。

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