メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

news letter
RSS

[59]「公的な住宅手当」創設の機運を逃してはならない~衆院選公約実現へ議論急げ

住宅確保給付金の利用34倍、窓口相談は3倍に急増――困窮者支援制度の限界を露呈

稲葉剛 立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科客員教授

自治体の現場から深刻な報告、困窮者支援の相談が急増

 その一方で、各自治体で生活困窮者の相談窓口を担当している現場からは、深刻な状況が報告されている。

 10月25日、厚生労働省は各自治体に設置されている生活困窮者自立支援制度(困窮者支援制度)の相談窓口における2020年度の新規相談件数が78万6195件(速報値)にのぼったという集計結果を公表した。この件数は、前年度(24万8398件)の3倍を超えており、この制度が創設された2015年度以降、最多となっている。

拡大生活困窮者自立支援制度の新規相談件数の年度別推移(厚生労働省の検討会資料から)
 厚生労働省は現在、2022年度以降に生活困窮者自立支援制度と生活保護制度を一体的に見直すための法案提出をめざすという方針を立てており、見直しに向けた第一段階として「生活困窮者自立支援のあり方等に関する論点整理のための検討会」と題した審議会を立ち上げた。困窮者支援制度の相談実績は、その検討会の今年度第1回会議(10月25日)の資料として発表されたものである(注1)

20~30代が深刻。解雇・個人事業主・住まいの問題が増加

拡大自治体の相談窓口
 この会議の資料には、各自治体の窓口を訪れる相談者像の変化についても触れられていた。新型コロナウイルス感染症の感染拡大前の2020年1月と拡大後の2021年1月の新規相談者数を比較すると、20代が3.5倍、30代が3.3倍と、他の世代に比べて特に増加幅が大きかったという。

 各自治体へのアンケート調査では、「解雇・雇い止め等による非正規雇用労働者からの相談が増えた」、「個人事業主からの相談が増えた」と感じていると回答した自治体が約85%にのぼり、「住まいに課題のある人からの相談が増えた」という回答も8割を超えていた。

住まいの維持が困難。住居確保給付金の利用は34倍に

 コロナ禍の経済的影響により収入が減少し、住まいの維持に困難を抱えている人が増えていることは、困窮者支援制度の支援メニューの一つである住居確保給付金(期限付きの家賃補助)の利用件数が急増していることからもわかる。

 2016年度以降、住居確保給付金の決定件数は毎年4000~5000件にとどまっていたが、2020年度はフリーランスや自営業者が利用しやすいように制度が改善されたこともあって、利用者数が急増。年間の決定件数が約13万5千件と、前年度比で34倍となった。同制度による支給金額を決算ベースで見ると、2020年度は306億円と前年度比52.8倍まで急伸している。

拡大住居確保給付金の支給実績の年度別推移(厚生労働省の検討会資料から)
(注1)「生活困窮者自立支援のあり方等に関する論点整理のための検討会(第1回)」の資料はこちらのリンク先にアップされている。

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


筆者

稲葉剛

稲葉剛(いなば・つよし) 立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科客員教授

一般社団法人つくろい東京ファンド代表理事。認定NPO法人ビッグイシュー基金共同代表、住まいの貧困に取り組むネットワーク世話人。生活保護問題対策全国会議幹事。 1969年広島県生まれ。1994年より路上生活者の支援活動に関わる。2001年、自立生活サポートセンター・もやいを設立。幅広い生活困窮者への相談・支援活動を展開し、2014年まで理事長を務める。2014年、つくろい東京ファンドを設立し、空き家を活用した低所得者への住宅支援事業に取り組む。著書に『貧困パンデミック』(明石書店)、『閉ざされた扉をこじ開ける』(朝日新書)、『貧困の現場から社会を変える』(堀之内出版)等。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

稲葉剛の記事

もっと見る