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[59]「公的な住宅手当」創設の機運を逃してはならない~衆院選公約実現へ議論急げ

住宅確保給付金の利用34倍、窓口相談は3倍に急増――困窮者支援制度の限界を露呈

稲葉剛 立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科客員教授

課題山積の困窮者支援制度。コロナ禍でさらに問題露呈

 私は、困窮者支援制度を根拠づける法案が国会で審議されていた2013年当時から、この制度が生活困窮者を支援することを目的にしていながら、支援メニューが就労面での支援に偏っており、家計を支える現金給付のメニューがほとんどないことを問題視してきた。

 コロナ禍の影響で雇用が悪化し、就労支援がほとんど機能しなくなった状況において、困窮者支援制度の中で、唯一、現金を給付するメニューである住居確保給付金が最も活用されたというのは、困窮者支援制度の限界を示す象徴的な出来事だったと思う。

 コロナ禍で住居確保給付金は利用しやすくなったものの、依然として収入要件が厳しすぎること(東京都内の単身者の場合、月収約13万8千円以下)、支給される給付金の上限額も低いこと(都内の単身者で53700円)、支給期間が限定されていること(原則として最長9ヶ月間)、ハローワークでの求職活動が要件とされていること、敷金・礼金等の初期費用の支給がないこと等、さまざまな問題点が残されている。

派遣社員として働いていた会社からの「新型コロナウイルス感染拡大による業績悪化」を理由に契約を打ち切られた女性。雇い止めを告げる文書を手に「コロナのせいと言えば会社は何でもできてしまう」と話した=2021年6月4日、札幌市内拡大派遣社員として働いていた札幌市内の会社から、「新型コロナウイルス感染拡大による業績悪化」を理由に契約を打ち切られた女性。雇い止めを告げる文書を手に「コロナのせいと言えば会社は何でもできてしまう」と話した

検討会の菊池教授「顕在化した住宅喪失リスクに対応した体制を本格整備すべき」

 厚生労働省の検討会では、住居確保給付金のあり方についても議論されていく予定だが、委員の一人である菊池馨実氏(早稲田大学法学学術院教授)は、1回目の会議に提出した「メモ」において以下のような指摘をおこなっている。

「今般のコロナ禍で、住まいを喪失するおそれのある人の多さ(裾野の広さ)が顕在化した以上、そうした住宅喪失リスクに対応した体制を本格的に整備すべきではないかとの疑問が生じる。直接的には、今回の特例で拡大・緩和された支給対象者等の扱いいかんといった論点になると思われるが、従来から手薄であった家賃補助的な施策を本格展開する好機とも言い得る。」

欧米のような普遍的な家賃補助制度を。悠長すぎる厚労省

 私も菊池氏の主張に全面的に賛同するものであり、欧米で実施されているような公的な住宅手当(普遍的な家賃補助制度)の実現に向けた議論を検討会でもぜひおこなってほしいと思うが、同時に、これから検討会で議論を進め、2022年以降の法改正をめざすという厚労省の立てているスケジュールは悠長すぎるとも感じている。

拡大東京都の窓口に当面の住まいの相談に訪れた20代の男性。ホテルなどを転々としながらコンビニでアルバイトして生活しているという。「新型コロナの影響が続く中、今の仕事がなくなったら生活できない」と話した

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筆者

稲葉剛

稲葉剛(いなば・つよし) 立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科客員教授

一般社団法人つくろい東京ファンド代表理事。認定NPO法人ビッグイシュー基金共同代表、住まいの貧困に取り組むネットワーク世話人。生活保護問題対策全国会議幹事。 1969年広島県生まれ。1994年より路上生活者の支援活動に関わる。2001年、自立生活サポートセンター・もやいを設立。幅広い生活困窮者への相談・支援活動を展開し、2014年まで理事長を務める。2014年、つくろい東京ファンドを設立し、空き家を活用した低所得者への住宅支援事業に取り組む。著書に『貧困パンデミック』(明石書店)、『閉ざされた扉をこじ開ける』(朝日新書)、『貧困の現場から社会を変える』(堀之内出版)等。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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