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大谷翔平のMVP受賞が持つ意味~何が評価され、何を変えるのか

名実ともに現在の大リーグを代表する選手の一人になった背景

鈴村裕輔 名城大学外国語学部准教授

拡大本拠地最終戦のマウンドで力投するエンゼルスの大谷翔平=2021年9月26日、米アナハイムのエンゼルスタジアム

 大谷翔平(ロサンゼルス・エンゼルス)が2021年の大リーグ・アメリカン・リーグの最優秀選手(MVP)となった。ナショナル・リーグはフィラデルフィア・フィリーズのブライス・ハーパーが2度目のMVPを獲得した。

 日本生まれの大リーグ選手としては、2001年のイチロー(当時シアトル・マリナーズ)以来20年ぶりの受賞である。また、今回はMVP選考の投票権を持つ全米野球記者協会(BBWAA)の30人の記者が全員、大谷に1位票を投じた。満票での選出は2015年のハーパー以来6年ぶり。1931年にBBWAAがMVPの選出を行うようになってから19人目の快挙であった。

社会的な関心事となった大谷のMVP

 当然のことながら、結果が公表された11月19日には、テレビや新聞、インターネット、ラジオなどのメディアが大谷のMVP受賞を大々的に報道し、岸田文雄首相も「大変な偉業だ。国民として誇らしい」と称賛した。東京タワーは大谷の背番号「17」にちなみ、同日の夕方(17時17分)に「祝17」という記念メッセージとエンゼルスの球団の色である赤、青、白の照明を点灯するなど、文字どおり社会的な関心事となった。

 また、政府が国民栄誉賞の授賞の意向を伝えると、「まだ早いので」と辞退したことも注目された。

 このように幅広い層の関心を集めた大谷のMVP受賞だが、日本国内では「大谷はMVP」という声は根強かったし、大リーグ機構がアメリカン・リーグのMVP投票の結果に基づき上位3人を公表すると、米国の関係者の間でも大谷の受賞を有力視する見方が優勢であった。

拡大大谷翔平選手のMVP受賞を祝い、メインデッキに「祝17」と表示された東京タワー。後ろは部分月食で欠けた月=2021年11月19日、東京都港区

野球統計学上は当然のMVP選出

 また、選手を評価するための手法の高度化と複雑化が進む大リーグの現状に照らせば、大谷のMVP受賞は順当という意見には説得力があった。とりわけ、野球統計学の発展により近年、大リーグで重視されている指標であるWAR(Wins above Replacement)は、大谷が今季の大リーグで最も優れた選手であることをはっきり示していた。

 WARとは、ある選手が出場することは、置き換えが可能な選手に比べてどれだけ勝利数を積み増すかを推計するために開発された指標で、打撃、守備、走塁、投球を総合的に評価することが可能とされる。

 約100の計算に基づいて算出され、機関により数値が異なるうえ、標準化された手法が確立されていないなど、まだ発展過程にあり、専門家の間でも批判や懐疑的な意見が根強いのも事実だが、2021年の大谷は、ベースボール・リファレンスの計算(rWAR)で9.1、ファン・グラフスの計算(fWAR)で8.1と、いずれも両リーグを通じて最高の数値であった。

 これらの結果は、大谷が出場することは、その他の選手が試合に出た場合に比べ、エンゼルスに8ないし9つの勝利をもたらすことを意味する。

 WARには、異なる役割を担うと考えられる投手と打者を、同じ指標で評価するという特徴がある。その意味で、打者でもあり投手でもある大谷のWARが高くなったことは、2021年の大谷の「二刀流」としての活躍が、われわれの感覚だけでなく数値の面からも確認できたことを示すと考えられる。

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筆者

鈴村裕輔

鈴村裕輔(すずむら・ゆうすけ) 名城大学外国語学部准教授

1976年、東京生まれ。名城大学外国語学部准教授、法政大学国際日本学研究所客員所員。法政大学大学院国際日本学インスティテュート政治学研究科政治学専攻博士課程修了・博士(学術)。専門は比較文化。主著に『メジャーリーガーが使いきれないほどの給料をもらえるのはなぜか?』(アスペクト 2008年)、『MLBが付けた日本人選手の値段』(講談社 2005年)がある。日刊ゲンダイで「メジャーリーグ通信」、大修館書店発行『体育科教育』で「スポーツの今を知るために」を連載中。野球文化學會会長、アメリカ野球愛好会副代表、アメリカ野球学会会員。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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