2021年11月25日
それにしても酷い。
何が酷いって、岸田政権による10万円の給付だ。
ぶっちゃけ「18歳以下へのひとり当たり10万円相当の給付」はどうでもいい。
夫ひとりが年収961万円の世帯はもらえないのに、妻と夫が両方年収900万円で合わせて1800万円の世帯はもらえるから不平等だなんて批判が出ているが、お金を持っている人たちのことはどうでもいい。
19歳になってしまった人はかわいそうだなと思うが、私にはその程度の受け止め方しかない。
問題はもう1つの方だ。新型コロナによる困窮支援としての「住民税非課税世帯に対する10万円の給付」である。正直、「住民税非課税世帯」という言葉ほど腹の立つものはない。ましてや「経済的に困っている世帯」などと言われると、本当にムカつく。
ハッキリ言うが、この世帯は「住民税が非課税な世帯」というだけのことであって、困窮している世帯そのものを指す言葉ではない。
単身者であれば給与のみの年収100万円以下では住民税非課税世帯となる。しかしちょっと考えてみれば分かるが、100万円以下の年収で普通の1人暮らしの生活ができるはずはない。
では住民税非課税世帯とは、どういう人たちなのだろうか。
もちろん生活保護受給者や、極端に収入の少ない人も住民税非課税世帯に含まれてはいるが、この世帯に何かを給付しますと言ったときに、それを受け取る人のなかには少なからず年金生活者がいるのである。
年金収入だけの場合は、夫婦2人暮らしでどちらかが扶養親族で、おおよそ扶養する人の年金が211万円以下であれば、住民税非課税世帯となる。
もちろん住んでいる自治体や配偶者の年金収入など、さまざまな条件はあるが、年収100万円の1人暮らしの人の2倍以上の収入があっても住民税非課税世帯として扱われるのである。
さらに、これは前年度の収入が基準であり、土地や家などの資産をすでに持っているのであれば、年金生活者であっても、住民税非課税世帯というイメージほどは、生活に困っているわけではないとも言える。
確実に困っているのは、アルバイトや派遣などで、なんとか生計を立てている年収100〜300万円台の現役世代である。
実家暮らしならまだ良いが、家賃を払いながら1人で生活をしている人などは、本当に困り果てている。にもかかわらず、100万円以上の収入があるから、10万円の給付を受け取れないのである。
コロナ禍の経済政策で、年収100〜300万円台の現役世代というのは、まともな支援も無く、ただひたすらに無視されてきたと言っていい。
例えば現在、国民健康保険の「新型コロナ感染症の影響による収入減少に伴う保険料の減免制度」が実施されている。
コロナ禍で生活が苦しいときに、毎月の国保料を減免してもらえるのなら、ありがたいことである。
しかしこの条件の中には「昨年の収入実績より30%以上減少する」というものがある。このため、前年の合計所得金額に制限があるとはいえ、年収1000万円の人が700万円に減ったら減免を受けられるが、年収200万円の人は140万円まで減らないと減免を得られないのである。
年収1000万円であれば、貯金を切り崩すなどでやりくりすることも可能かもしれない。だが、収入200万円の人はすでに生活費ギリギリの状態で生活しているのであり、そこから年収が60万円も減ったら生活が破綻してしまう。
だから年収200万円の人は、収入が減りそうになったら、バイトの時間を増やすなど収入を減らさないようにいろいろな手段を尽くして、努力して収入を保っているのである。
ところがそうして自分の生活を必死で守ったその結果が、行政からの「アンタ、収入減ってないから困ってないでしょ認定」なのだから、まったくふざけた話である。
なぜ収入が減っても大丈夫な余裕のある人に給付や減免といった優遇がされるのか。収入が減らせない人の方が大変に決まっているだろう。
収入を30%も減らせる人は、本当に困っている人なのだろうか。困っていないことはないだろうが、それよりももっと困っているのは30%も収入を減らせない人たちなのだから、優遇の順序がおかしいとしか言いようがない。
確かに、あくまでもこうした給付や減免措置は「コロナ禍で収入が減った人向け」なのだから、減ってない人が受け取れないのは当たり前と思う人もいるかも知れない。
しかし、こうした給付や減免は
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