赤木智弘(あかぎ・ともひろ) フリーライター
1975年生まれ。著書に『若者を見殺しにする国』『「当たり前」をひっぱたく 過ちを見過ごさないために』、共著書に『下流中年』など。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
12月2日、寝たきりの姉(84)を殺害したとして殺人罪に問われた妹(82)の裁判で、東京地裁は懲役3年執行猶予5年の判決を言い渡した。
姉妹には親しい親戚や知人はおらず、1カ月10万円ほどの年金だけで暮らしていたという。ケアマネージャーが生活保護の受給や姉を施設にあずけることを勧めても、妹は「税金をもらって生きるのは他人に迷惑をかける」として断っていたということである。
そのうち姉の体調が悪化。「これ以上介護できない。迷惑をかけないためには終わらせるしかない」と考えて殺害。警察に自首したという。
介護問題と貧困問題が合わさった、まるで森鷗外の「高瀬舟」のような悲劇だが、やはり一番気になるのは、妹が「迷惑をかける」として福祉を拒んだ結果、殺人という最大の「迷惑」を世間にかけてしまったことだろう。