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「平和の祭典」の大義を果たそうとしないIOC~北京冬季五輪の外交ボイコット問題(上)

人権問題よりスポンサーにご執心のバッハ会長

小田光康 明治大学ソーシャル・コミュニケーション研究所所長

外交ボイコットが国際問題化

 2ヶ月後の2022年2月開幕に迫った北京冬季五輪が、政治問題化している。米国政府は新疆ウイグル自治区での少数民族ウイグル族らへの弾圧など人権問題に抗議するため、北京冬季五輪に「外交ボイコット」を表明した。代表選手の出場は認めるものの、閣僚級の政府当局者を派遣するのを取りやめる。

 これには英国やオーストラリアやカナダが追従した。中国政府はこの動きに対して、「強烈な不満を表明し、断固とした反対を表明する。対抗措置をとる」と反発した。

 これについて、岸田総理大臣は「わが国の対応は、オリンピックの意義、さらには、わが国の外交にとっての意義などを総合的に勘案し、国益の観点からみずから判断していきたい。これがわが国の基本的な姿勢だ」と述べた。

米国の北京冬季五輪に対する「外交ボイコット」について、取材に応じる岸田文雄首相=2021年12月7日拡大米国の北京冬季五輪に対する「外交ボイコット」について、取材に応じる岸田文雄首相=2021年12月7日

 外交ボイコットは各方面にも波及する。国内外の五輪スポンサーは戸惑いを隠せない。コロナ禍に翻弄された今夏の東京五輪と同様に、巨額のスポンサー料をドブに捨てるだけでなく、企業のブランドイメージを毀損しかねないからだ。

 五輪は平和の祭典といわれ、スポーツに政治を持ち込むべきではないという議論は長年されてきた。確かにそうあるべきだ。だが、その方向に進む気配すらない。「外交ボイコット」という用語が出てくること自体、五輪が政治の場であることを表している。国際オリンピック委員会(IOC)はこの問題への対応を放棄してしまったようだ。筆者はこれまで米五輪専門メディアAround the Rings記者として、主に五輪の政治経済的な問題を取材してきた。本稿では五輪と政治の関係について、過去の五輪大会を振り返りながら述べていきたい。

 北京冬季五輪の聖火歓迎式典で、聖火皿に点火する蔡奇・北京市共産党委書記=2021年10月20日、北京 拡大 北京冬季五輪の聖火歓迎式典で、聖火皿に点火する蔡奇・北京市共産党委書記=2021年10月20日、北京

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筆者

小田光康

小田光康(おだ・みつやす) 明治大学ソーシャル・コミュニケーション研究所所長

1964年、東京生まれ。米ジョージア州立大学経営大学院修士課程修了、東京大学大学院教育学研究科博士課程満期退学。専門はジャーナリズム教育論・メディア経営論、社会疫学。米Deloitte & Touche、米Bloomberg News、ライブドアPJニュースなどを経て現職。五輪専門メディアATR記者、東京農工大学国際家畜感染症センター参与研究員などを兼任。日本国内の会計不正事件の英文連載記事”Tainted Ledgers”で米New York州公認会計士協会賞とSilurian協会賞を受賞。著書に『スポーツ・ジャーナリストの仕事』(出版文化社)、『パブリック・ジャーナリスト宣言。』(朝日新聞社)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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