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武蔵野市の住民投票条例問題は「自治基本条例」攻防史の延長にある

「市民参加」の実現のため、問われる条例の「活用」

藤生 明 朝日新聞編集委員

 東京都武蔵野市で住民投票条例案をめぐる衝突が連日報じられている。この動き、外国人の住民投票に焦点があてられているが、この10年来、自民党や憲法改正に取り組む全国組織「日本会議」などによる自治基本条例反対運動そのものだ。彼らは何を問題とし、どんな訴えをしてきたのか。取材ノートを広げてみた。

武蔵野市の松下玲子市長  拡大武蔵野市の松下玲子市長

制定反対をMLで呼びかけた日本会議関係者

 「まるで、川崎市の『ヘイトスピーチ禁止条例』の賛成反対のぶつかりあいですね」

 日本会議神奈川の役員、木上和高氏(75)は武蔵野市での混乱をネットの動画で見てそんな印象をもった。そしてこうも思ったという。

 「我々の運動の成果もあって、全国で自治基本条例の制定はほぼ止まったはず。今ごろ、なぜ?」

 武蔵野で問題になっているのは住民投票条例。自治基本条例とは話がちがうでしょ、と言うなかれ。木上氏の指摘どおり、この問題は自治基本条例をめぐる攻防の延長線上にある。

 というのは、自治基本条例は制定推進派が「自治体の憲法」と位置づけるとおり、住民投票条例や地域コミュニティー条例といった関連条例を基本条例の下にぶらさげていくことで、全体で機能するよう制度設計されているからだ。

 武蔵野の場合も、昨年施行の自治基本条例に「住民投票についての必要な事項は別に条例で定める」(19条)とあり、その条文に従って今回の議案提出となった。つまり、この問題は自治基本条例をめぐる攻防の一つ、なわけである。

 長年この反対運動に取り組んできた木上氏は武蔵野での混乱を知ってすぐ、武蔵野市長にあて制定反対の意見を届けるよう、メーリングリストなどを通じ賛同者に呼びかけている。

 木上氏が抱く懸念は多々ある。①「市民」の定義があいまいで、外国人や「プロ市民(活動家)」らが行政に入り込む②市民の参加と協働などを掲げ、行政・議会による地方自治が破壊される③住民投票はポピュリズムに陥りやすく、誤った行政判断に帰着しかねない④住民投票を通じて、一自治体が国防を揺るがしかねない……。

 木上氏は「要は、議会で多数をとれない勢力が、住民投票などをつかって、政策決定権に直接アクセスし、行政を動かす巧妙な仕掛けです」と結論づける。

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筆者

藤生 明

藤生 明(ふじう・あきら) 朝日新聞編集委員

1967年生まれ。91年入社。長崎、筑豊、小倉、博多に勤務。2001年、雑誌AERA。12年、新聞に戻り大阪、東京両社会部。17年から右派・保守国民運動を担当する編集委員。著書に『ドキュメント日本会議』『徹底検証神社本庁』(ともにちくま新書)

※プロフィールは、論座に執筆した当時のものです