「赤木ファイル事件」真相解明逃れを許すな〜請求の認諾が意味するもの
国は国民の血税を支払うことによって裁判を終結させた
前田哲兵 弁護士
「請求の認諾」が馴染む事案とは
話を戻そう。
冒頭に、裁判というのは、「真相解明」を目的としているのではなく、あくまで「請求権が存在するか否か」を判断する手続きである、と述べた。
例えば、「お金を100万円貸しました。だから返してください」といった純粋なお金の問題であれば、「請求権(=つまり100万円を支払ってもらう権利)が存在するか否か」だけが分かればよく、「真相解明」まで望まない人は多いだろう。細かい話はさておき、お金さえ返してもらえればよいからだ。こういった場合、「請求の認諾」という手続きは馴染(なじ)む。
しかし、先のがん遺伝子治療の件などは、断じてお金の問題ではない。原告はお金が欲しくて裁判をしているのではない。本当のことが知りたくて裁判をしているのだ。これは人の生命や尊厳にかかわることだ。
赤木さんの妻は、記者会見でこのことを伝えようとしていたのだ。そこでは「真相解明」こそが重要であり、「請求の認諾」という手続きは馴染まないのだ。
なぜ妻は裁判を起こしたのか
もともと夫については、公務災害が認定されていた。しかし、
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