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「赤木ファイル事件」真相解明逃れを許すな〜請求の認諾が意味するもの

国は国民の血税を支払うことによって裁判を終結させた

前田哲兵 弁護士

「請求の認諾」が馴染む事案とは

 話を戻そう。

 冒頭に、裁判というのは、「真相解明」を目的としているのではなく、あくまで「請求権が存在するか否か」を判断する手続きである、と述べた。

 例えば、「お金を100万円貸しました。だから返してください」といった純粋なお金の問題であれば、「請求権(=つまり100万円を支払ってもらう権利)が存在するか否か」だけが分かればよく、「真相解明」まで望まない人は多いだろう。細かい話はさておき、お金さえ返してもらえればよいからだ。こういった場合、「請求の認諾」という手続きは馴染(なじ)む。

 しかし、先のがん遺伝子治療の件などは、断じてお金の問題ではない。原告はお金が欲しくて裁判をしているのではない。本当のことが知りたくて裁判をしているのだ。これは人の生命や尊厳にかかわることだ。

 赤木さんの妻は、記者会見でこのことを伝えようとしていたのだ。そこでは「真相解明」こそが重要であり、「請求の認諾」という手続きは馴染まないのだ。

なぜ妻は裁判を起こしたのか

 もともと夫については、公務災害が認定されていた。しかし、

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筆者

前田哲兵

前田哲兵(まえだ・てっぺい) 弁護士

1982年、兵庫県生まれ。前田・鵜之沢法律事務所所属。企業法務を中心に、相続や交通事故といった一般民事、刑事事件、政治資金監査、選挙違反被疑事件などの政治案件や医療事故も扱う。医療基本法の制定活動を行うほか、日本プロ野球選手会公認選手代理人、小中学校のスクールローヤーとしても活動中。著書に『業種別ビジネス契約書作成マニュアル』『交通事故事件21のメソッド』等。事務所HP:https://mulaw.jp/

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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