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子どもの小さな声を大きくして届けるマイクのような活動~子どもアドボカシー(下)

障害児施設への訪問活動にとりくんで

NPO法人子どもアドボカシーセンターOSAKA 内山洋子・鳥海直美

子どもの小さな声を大きくして届けるマイクのような活動~子どもアドボカシー(上)

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(4)「子どもの意見」をどう聴くのか? 障害児施設を訪ねる私の体験

内山洋子(うちやまようこ)
NPO法人子どもアドボカシーセンターOSAKA 事務局長
公益社団法人子ども情報研究センター会員
子どもや、おとなの声を「聴く」ことをライフワークにしている。

プレイルームにかけられた鍵、「牢屋みたいや」

 数年前から、アドボケイトとして障害児施設に訪問している。

 初めて行った時のこと。安全を優先しているのか、何もないプレイルームに、20人ぐらいの子どもたちが居た。ぬいぐるみがいくつかあるだけで、部屋の内側から鍵がかけられ、扉の開閉を職員が管理していた。入所したばかりの子が、「牢屋みたいや」と言ったことが忘れられない。

 今、子どもへの対応に問題があると言われている児童相談所に付設された一時保護所だが、施設の子どもの何人かも「いちほって(一時保護所のこと)怖いとこやで」と話してくれた。子どもたちの背景は分からないが、かなりしんどい状況で保護されて、そして「怖いとこ」を経験して、その気持ちを抱えて、誰も知り合いがいない施設に入って来たのか……。どんなに力を奪われたのだろうかと胸が痛くなった。

拡大子どもアドボカシーセンターOSAKA提供

「~~しなさい」には返事をするが、自分のことを問われると

 施設訪問は子どもの話を聴くことを目的として、個別に外出することを取り入れている。

 子どもと外出していると、同級生の子と出会うのを嫌がる子が多く、地域の子どもたちが遊びにくるのを見たことがない。地域と交流がほとんどない中で登校している。障害児施設は、子どもが当たり前に暮らす環境にはないと訪問するたびに感じる。

 入所年数が長ければ長いほど、普通に暮らすことから遠ざけられているように思う。そのせいなのか、「~~しなさい」ということばには、返事をするが、例えば「何色が好き?」という自分のことを問いかけられる質問には、スルーしたり「ん-」と返事に困る子が何名かいた。

「どちらも選べる」と理解しないと、願いを計画に反映できない

 幼児の時から入所している16歳のAに、何度か話を聴いた。感情がコントロールできない自分を認めることができなくて、自分を否定して、職員に迷惑をかけている存在と思っている。

 そんなAと外出した時のこと。計算ができるのに、財布を当たり前のように私に渡したり、お菓子の食べ残したゴミを当たり前のように「はい!」と言って渡してくれた。一人で出かけたことがないのか、知人と出かける経験があまりないからなのかな?とその時思った。

 退所後のことを質問したら、身内のいるグループホームに行くと即答した。よくきいてみると、見たこともないグループホームに自分も行くものだと思っているようだ。「一人暮らしはどう思う?」と聞いても「怖い」と言うだけで、話はひろがらない。一人暮らしするイメージがないのかな?と思った。退所しても一人暮らしできる力を充分に持っていると私は思うのだが、グループホームでしか選択肢は無いと思っているようだ。

 退所に向けた個別支援計画にAの声を反映させるには、「一人暮らし」「グループホーム」どちらも選べるのだと理解して、さまざまな気持ちを整理したり、自分の権利を学んだりしないと、Aの願いを個別支援計画に載せるのはとても難しい。

 そのため訪問の回数や人手を増やすことが、早急の課題だ。コロナ下で訪問頻度が制限されていることから、なかなかAと出会えず、気持ちは焦るばかり。Aはあと1年3カ月で退所になる。

欠落した退所への支援、重ねていた苦手克服の努力

 子どもの力を閉じ込めてしまう今の社会的養護のあり方に、なんとも言えない気持ちになる。退所に向けてサポートする制度が私の知る限り、障害児施設にはないようだ。慢性的な人手不足の施設の職員たちも、ジレンマを抱えているように見受けられる。

 A以外の子どもたちも、今までの納得できない怒りが溜まり、爆発して声を荒げているのかな?と思う場面があった。でも、その表現は障害のせいにされたり、個人のせいにされたりしているようだ。

 Aと外出したとき「人と話すのが苦手、何話したらいいかわかれへん」と話してくれた。聴いているうちに、漫画の好きなAは会話で使う言葉を漫画から学んでいると教えてくれた。話すことに苦手意識を持ち、それを克服しようとしているんだと、二人で確認しあった。豊かな時間と感じた瞬間だった。

かけられなくなった鍵、うかがえた変化

 私たちが訪問してから、いつの間にか鍵もかけられなくなり、子どもたちは、鍵がかけられないことに慣れてきているようだ。また、職員が遊びに参加したり、気持ちを受け止めている場面を見かけるようになった。私たち第三者が入ることで変化したのかもしれない。

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