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[60]入管庁はまだこんな使い古された手口を使うのか~「排除ありき」の政策押し通す印象操作

2022年は「モラル・パニック」の扇動に警戒を―人権がこれ以上侵害されぬように

稲葉剛 立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科客員教授

 2021年の年末が近づいてきた。この年末年始も全国各地で生活困窮者支援団体による食料支援や医療・福祉相談会などの緊急支援活動が開催される予定であり、急ピッチで準備が進められている。

 東京都内の支援情報については、北畠拓也さんがまとめてくださっているので、ご参考にしていただきたい。

 2021~2022年末年始@東京 利用できる支援情報まとめ(時系列)|北畠拓也 #note

拡大外国人にも呼びかけるため「食べ物、カウンセリング、医者、弁護士」と英語で書かれた案内も張り出された1年前の「年越し支援・コロナ被害相談村」=2021年1月2日、東京都新宿区

外国人への支援が増す中で入管庁が今後を左右しかねぬ資料公表

 こうしたコロナ禍の支援現場では、生活に困窮した日本人だけでなく、多くの外国人が支援を求めて来ることが常態化している。その多くが、難民認定の申請中で、在留資格のない状態にある外国人だ。そのため、長年、ホームレス支援を続けてきた団体と外国人支援団体が連携して、相談対応にあたる場面もコロナ以前に比べて格段に増えている。

 その外国人たちの今後を左右しかねない発表が、12月21日、出入国在留管理庁(入管庁)によって行われた。入管庁が「現行入管法上の問題点」と題する資料を公表したのだ。

 その資料を見た私の感想を率直に言わせてもらうと、「2021年にもなって、まだこんな使い古された手法を使うのか」というものだった。

「法令違反」(入管法の違反も含む)を強調する入管庁資料

 資料において入管庁は、「不法残留等により摘発等された外国人の多くは,出入国在留管理庁における強制送還等の手続の結果,国外に退去(出国)しているが,中には退去強制令書が発付された(行政手続上の退去強制手続が確定した)にもかかわらず退去を拒む外国人(送還忌避者)が存在」していると指摘した上で、昨年12月末時点の「送還忌避者」3103人のうち994人が法令違反で有罪判決を受けている、という点をことさらに強調している。

 また、「送還忌避者」の中には「難民認定制度の誤用・濫用が疑われる事案」があるとして、難民認定申請中の4人の犯罪歴についてわざわざ個別に説明をしている。

 その上で、入管庁は「送還忌避者」を国外退去させる上で、難民認定手続中は送還が一律停止されるという「送還停止効」などがネックになっていると主張。こうした「法の不備等」を改めるべきだと結論づけている。

拡大入管庁が発表した資料「現行入管法上の問題点」の一部。「送還を妨げる理由」として「法の不備等」を記している
拡大入管庁発表資料「現行入管法上の問題点」で、「送還忌避社の全体像」について「有罪判決」の人数を強調する記述。別のページでは犯罪歴を個別に説明している

「政策ありきの証拠づくり」

 先日、別のテーマが議論されたあるシンポジウムで、「近年は、霞が関でも『エビデンス・ベースト・ポリシー・メイキング』(客観的な事実や証拠に基づく政策立案)ということがよく言われるが、実際は『ポリシー・ベースト・エビデンス・メイキング』(政策に合わせた証拠づくり)が行われているのではないか」とお話されている方がいて、言い得て妙だと感心したが、入管庁が公表した資料はまさにこの「政策ありきの証拠づくり」という表現がぴったり来るものであったと思う。

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筆者

稲葉剛

稲葉剛(いなば・つよし) 立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科客員教授

一般社団法人つくろい東京ファンド代表理事。認定NPO法人ビッグイシュー基金共同代表、住まいの貧困に取り組むネットワーク世話人。生活保護問題対策全国会議幹事。 1969年広島県生まれ。1994年より路上生活者の支援活動に関わる。2001年、自立生活サポートセンター・もやいを設立。幅広い生活困窮者への相談・支援活動を展開し、2014年まで理事長を務める。2014年、つくろい東京ファンドを設立し、空き家を活用した低所得者への住宅支援事業に取り組む。著書に『貧困パンデミック』(明石書店)、『閉ざされた扉をこじ開ける』(朝日新書)、『貧困の現場から社会を変える』(堀之内出版)等。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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