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ゆるキャラ「すみっコぐらし」は、現代のアイデンティティ物語だ

「生きづらさ」への鋭いまなざしと批評性を備えたストーリーの魅力

西郷南海子 教育学者

「自分は自分である」アイデンティティ

 哲学者のアマルティア・センは、アイデンティティが単一のものである必要はないと説いたし(アイデンティティの複数性)、小説家の平野啓一郎も「分人主義」を唱えている。人間にはいくつものバックグラウンドがあるのであり、アイデンティティが何か単一の「真正(オーセンティック)」なものでなくてもいいと思えた時に、人の肩からは荷が下りるのではないか。

 たとえば「にせつむり」は、なめくじである。だが、それが周囲に伝わるのを防ぐために、細心の注意を払いながら、「かたつむり」として生きている。果たしてそれを笑うことはできるだろうか。なめくじと分かった途端に、人間に塩をかけられる可能性すらある。

 「すみっコぐらし」の仲間は、「にせつむり」がかたつむりではないことを知っている(バレている)。それを知った上で、「にせつむり」がなめくじであろうがかたつむりであろうが、かたつむりになりたい「にせつむり」そして、その存在そのものを尊重するのである。それが柔らかであたたかなタッチで描かれることで、私たち読者も、愛おしさをもって共感することができるのである。

 ここで筆者の娘(小5)が「アイデンティティって何?」と質問をくれた。そこでこう答えてみた。

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筆者

西郷南海子

西郷南海子(さいごうみなこ) 教育学者

1987年生まれ。日本学術振興会特別研究員(PD)。神奈川県鎌倉市育ち、京都市在住。京都大学に通いながら3人の子どもを出産し、博士号(教育学)を取得。現在、地元の公立小学校のPTA会長4期目。単著に『デューイと「生活としての芸術」―戦間期アメリカの教育哲学と実践』(京都大学学術出版会)。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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