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新生なでしこジャパン、W杯フル出場を懸けて女子アジアカップへ

増島みどり スポーツライター

拡大なでしこジャパンは昨年11月、欧州で親善試合を2試合戦った。遠征前の想定と違い、帰国時に14日間の待機が必要になった。写真はアイスランド戦=2021年11月25日、JFA提供

攻守の課題をどこまで解消できるか――ほぼ「ぶっつけ本番」の厳しさ

 今回上位5カ国に出場権が与えられるだけに、実力的には決して難しい目標ではない。反面、池田監督が7日の会見で「(準備の)期間が長くなかったので、限られたトレーニングキャンプの中で積み上げてきた選手たちという部分に(選出の)ウエイトを置いた。この2回のトレーニングキャンプのところで積み上げたものを、アジアの大会でぶつけられればと考えている」と、繰り返し「積み上げたものを」と発言した背景には、それだけチーム戦力を積み上げる時間が足りなかった、との厳しい状況がうかがえる。

 日本サッカー協会は、五輪後の新監督選定に2カ月以上を要した。加えてコロナ禍では練習、試合がスムーズに組めず、昨年11月のオランダ遠征から帰国時、オミクロン株の防疫措置のため突如2週間の隔離を強いられるなど、現場にとって困難な状況が続いた。

 池田監督が行った活動はまだ2回で、そのうち対外試合は昨年11月のオランダ遠征での2試合のみだ。

 また、18年アジアカップ優勝時、高倉監督率いたチームは16年の結成から2年目で成果が表れ、14年に優勝した当時、佐々木監督は、11年のW杯ドイツ大会で初優勝を経て、澤穂希や宮間あやといった世界的な選手によって完成、熟成したチーム編成で臨んでいる。過去2大会の優勝と比較すると、今回はほぼ「ぶっつけ本番」といってもいい。

拡大AFC女子アジアカップで初優勝し喜ぶ日本の選手たち=2014年5月25日、ベトナム・ホーチミン
拡大AFC女子アジアカップで連覇を果たしたなでしこジャパン。写真は決勝の豪州戦でゴールを決め喜ぶ横山(中央)ら=2018年4月20日、アンマン

オランダ遠征は1敗1引き分け、いまだ無得点で守備も模索中

 オランダ遠征では、過去3回の対戦で負けていなかったアイスランドに0-2と完封負け。次の試合は、日本戦が2試合目となったオランダが、疲労を考慮して大幅なメンバー変更しながら無得点に終わった(0-0)。

 アイスランド戦での1失点目は相手3人に対し4人、1失点目は相手2人に日本は3人と、DFの人数が揃っている中でゴールを奪われており、池田監督が掲げる「ボールを奪いにいく」積極的なスタイル以前に、それを可能にするための組織的な守備は模索中と言える。

拡大欧州遠征でのオランダ戦で相手と競り合う長野風花=2021年11月29日、JFA公式Webサイトから
拡大欧州遠征でのアイスランド戦。なでしこジャパン初采配となった池田太監督=2021年11月25日、JFA提供

 ゴールもまだない。初ゴールの期待も込めて今回、MF遠藤純(21=エンゼル・シティFC)を呼んだ。高倉監督も五輪代表として起用した一人で、昨年12月に、日テレ東京Vから米女子プロ(NWSL)のエンゼル・シティFCへ移籍したばかりだ。

 監督は、「(遠藤は)左足のスペシャリティーをもっている。フィジカル的にも、世界に通じるスピードも持ち味で、左足やスピードが、チームにさらなるパワーをプラスしてくれるんじゃないかと思う」と攻撃力のアップを選出理由とした。


筆者

増島みどり

増島みどり(ますじま・みどり) スポーツライター

1961年生まれ。学習院大卒。84年、日刊スポーツ新聞に入社、アマチュアスポーツ、プロ野球・巨人、サッカーなどを担当し、97年からフリー。88年のソウルを皮切りに夏季、冬季の五輪やサッカーW杯、各競技の世界選手権を現地で取材。98年W杯フランス大会に出場した代表選手のインタビューをまとめた『6月の軌跡』(ミズノスポーツライター賞)、中田英寿のドキュメント『In his Times』、近著の『ゆだねて束ねる――ザッケローニの仕事』など著書多数。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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