2022年01月12日
まるで厳しいアジア予選を予言するかのように、冷たい雨のなか千葉県内で11日、9大会連続でのW杯出場を目指す「新生なでしこジャパン」のトレーニングがスタートした。昨年10月、監督に就任したばかりの池田太監督(51)はトレーニングに先駆けて7日、大会3連覇と、W杯出場権の両方をかけて挑む「AFC(アジアサッカー連盟)女子アジアカップインド2022」のメンバー発表に臨んだ。
また、「ホーム&アウェー方式」でW杯最終予選を行う男子とは違い、女子は、今アジア選手権が、W杯予選も兼ねている。早くも来年に迫った23年の「ニュージーランド・オーストラリアW杯」のアジア代表の座を手にできるのは、開催国として出場権をすでに得ているオーストラリアを除く5カ国。1月20日から2月6日まで、インドのムンバイ、ナビムンバイ、プネーと、インド西側の3都市で12カ国によって争われる。
監督は、「ワールドカップ出場権を確実に手にし、日本女子サッカーがアジアの頂点に向けて戦う姿、熱い思い、熱い戦いが伝えられればいいなと感じる。是非、皆さんに期待していただきたい」と、国内外でプレーする23人を選出。東京五輪代表メンバーから、イングランド、アーセナルのFW岩渕真奈、バイエルン・ミュンヘンのDF熊谷紗希、現在、WEリーグ得点ランキングでトップタイ(5点)のFW菅澤優衣香(浦和)ら14人を選んだ。
また五輪代表には入らなかったMF猶本光(浦和)、MF長野風花、MF宮澤ひなた(ともにマイ仙台)ら東京五輪後に成長著しい新しい選手たちも名を連ねる。
今回上位5カ国に出場権が与えられるだけに、実力的には決して難しい目標ではない。反面、池田監督が7日の会見で「(準備の)期間が長くなかったので、限られたトレーニングキャンプの中で積み上げてきた選手たちという部分に(選出の)ウエイトを置いた。この2回のトレーニングキャンプのところで積み上げたものを、アジアの大会でぶつけられればと考えている」と、繰り返し「積み上げたものを」と発言した背景には、それだけチーム戦力を積み上げる時間が足りなかった、との厳しい状況がうかがえる。
日本サッカー協会は、五輪後の新監督選定に2カ月以上を要した。加えてコロナ禍では練習、試合がスムーズに組めず、昨年11月のオランダ遠征から帰国時、オミクロン株の防疫措置のため突如2週間の隔離を強いられるなど、現場にとって困難な状況が続いた。
池田監督が行った活動はまだ2回で、そのうち対外試合は昨年11月のオランダ遠征での2試合のみだ。
また、18年アジアカップ優勝時、高倉監督率いたチームは16年の結成から2年目で成果が表れ、14年に優勝した当時、佐々木監督は、11年のW杯ドイツ大会で初優勝を経て、澤穂希や宮間あやといった世界的な選手によって完成、熟成したチーム編成で臨んでいる。過去2大会の優勝と比較すると、今回はほぼ「ぶっつけ本番」といってもいい。
オランダ遠征では、過去3回の対戦で負けていなかったアイスランドに0-2と完封負け。次の試合は、日本戦が2試合目となったオランダが、疲労を考慮して大幅なメンバー変更しながら無得点に終わった(0-0)。
アイスランド戦での1失点目は相手3人に対し4人、1失点目は相手2人に日本は3人と、DFの人数が揃っている中でゴールを奪われており、池田監督が掲げる「ボールを奪いにいく」積極的なスタイル以前に、それを可能にするための組織的な守備は模索中と言える。
ゴールもまだない。初ゴールの期待も込めて今回、MF遠藤純(21=エンゼル・シティFC)を呼んだ。高倉監督も五輪代表として起用した一人で、昨年12月に、日テレ東京Vから米女子プロ(NWSL)のエンゼル・シティFCへ移籍したばかりだ。
監督は、「(遠藤は)左足のスペシャリティーをもっている。フィジカル的にも、世界に通じるスピードも持ち味で、左足やスピードが、チームにさらなるパワーをプラスしてくれるんじゃないかと思う」と攻撃力のアップを選出理由とした。
グループリーグ初戦はミャンマー(21日)、2戦目はベトナム(24日)、グループ最終戦は韓国(27日)で上位2チームなど計8チームによるノックアウトステージに入る。インドの現在の気温は25度前後で、試合の間隔も中2日と疲労回復との戦いになる。コンディション、新型コロナ感染予防対策を重視しながら、3連覇とW杯出場のいわば「二兎を追う」入念な準備が必要になるだろう。
女子委員長に就任した佐々木則夫氏は、アジアを戦い抜く難しさを熟知したうえで3点をあげた。
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