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【55】巨大地震への備えを、日本の未来を描く契機に

「復興計画」は地域の「将来計画」、早め早めの策定を

福和伸夫 名古屋大学減災連携研究センター教授

日本海溝沿い地震、犠牲者19万9千人予測の衝撃

 2022年になって早々、日本各地で大きな地震が発生している。1月4日早朝には小笠原諸島母島を震度5強の揺れが襲った。22日午前1時過ぎには日向灘を震源とする地震があり、大分県と宮崎県で震度5強を観測した。日向灘は30年以内に70~80%の確率で起こるとされる南海トラフ巨大地震の想定震源域内だ。気象庁の評価検討会は、南海トラフ地震につながる可能性は低いとみているが、現地では水道管や道路の破損など、かなりの被害がでた。

 昨年末の12月21日、内閣府が北海道から東北の太平洋沖で発生が予想される最大級の地震の被害想定結果を発表した。

 想定対象は、東北沖から北海道・日高沖に続く「日本海溝」(M9・1)と、十勝沖から千島列島にかけての「千島海溝」(M9・3)の二つの地震。冬の深夜を想定した日本海溝沿いの地震での予想死者は、19万9千人にも上った。東日本大震災の10倍である。

 被害のほとんどは津波によるものだ。人口当たりの犠牲者は、6100万人が被災し、亡くなる人は32万3千人に上ると想定されている南海トラフ地震に比べて格段に多い。驚くような被害である。

 冬の深夜、吹雪の中、路面が凍結し、停電していれば、津波からの避難は難しい。人命を守るためには、津波避難タワーを建設し、早期避難を心掛け、暖が取れる設備を早急に整備する必要がある。

 一方で、津波による家屋流出や経済被害を減じることは困難である。そのため、震災後のくらしや生業のことを考えれば、我々の生活の在り方そのものを見直す必要もある。

 南海トラフ地震、首都直下地震、日本海溝・千島海溝沿いの地震など、今後、発生が懸念される大地震に対して、そろそろ社会が本気になるべきだと思う。

周到な準備で災禍を乗り越え、より良いまちへ

 人類は、過去、様々な災禍を乗り越えて新たな社会を創ってきた。まちづくりも、ビルド・バック・ベター(Build Back Better、より良い復興)を目指すことができる。

 関東大震災のあとの東京の帝都復興事業や、太平洋戦争敗戦後の名古屋の戦災復興事業などは成功事例である。いずれも未来を見据えた復興計画をいち早く立案したことが幸いした。それができたのは、周到な事前準備があったからである。

 帝都復興院の総裁として帝都復興計画をまとめた後藤新平は、今から100年前、東京市長をつとめていた。

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