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あの原発事故から、原告になるまで11年間の歳月を要した

[1月22日~1月28日]名護市長選、伊藤詩織さん控訴審判決、甲状腺がん提訴……

金平茂紀 TBS報道局記者、キャスター、ディレクター

1月22日(土) 『報道特集』の生放送。後半の特集は、中国産アサリの産地偽装。そもそも日本でアサリがとれなくなってしまい、それを中国産アサリの一時的「畜養」という「新鮮化」プロセスを経て「熊本産アサリ」と銘打って市場に出されているという。ここまで大規模かつ堂々と行われていると、行政(農水省)の方も、じゃあ一体どうしたらいいんだい、と手をこまねいているという印象だ。問題は、中国産・韓国産として店頭に出すと売れないのだという。そこが一番の問題で、消費者メンタリティに潜む本音が透けて見える。なかなか深い話だ。

 局へ向かう途中、電車に乗ったら、再びすき出したなあという印象。オミクロン株の感染拡大の影響は目に見えやすい。

 西日本新聞社から掲載紙が送られてきた。『『筑紫哲也NEWS23』とその時代』の紹介記事。福岡で丁寧な取材を受けた。ありがたいことだ。

西日本新聞より西日本新聞より=撮影・筆者

 河井案里元参院議員、大量の睡眠薬を服用して緊急搬送されたとのニュース。東京の新規感染者数1万1227人。

基地問題を住民の判断にゆだねるのは「いじめ」だ

1月23日(日) 朝早い新幹線で福島へ。取材先の都合で、朝10時から市内の換気の良いコーヒーショップの2階を借り切って2時間あまりお話をうかがう。TさんとOさん。会いに来てよかった。とても話の中身が濃い。テーマが多すぎて、どのような視点から取材を進めるべきかに迷うくらいだ。情報公開請求はとても有力な武器になる。その後、信頼している地元テレビ局の記者と会って話をする。彼は地元で強烈な逆風を感じながら、とてもよく頑張っていると思う。

投開票日翌日の地元新聞より名護市長選の投開票日翌日、1月24日付の地元紙=撮影・筆者
 15時過ぎの新幹線で、福島から東京に戻る。情報の整理。雑件の作業を終えた20時40分頃、沖縄・名護市長選挙の当選確実情報が出た。現職の渡具知武豊市長が再選された。

 4年前の選挙を現地で取材した時の記憶が甦ってきた。小泉進次郎氏という広告塔が2回にわたって選挙戦中に渡具知候補の応援に入って、地元は大変なお祭り騒ぎになっていた。名護の高校生がどっと繰り出していた。進次郎氏との2ショット写真をスマホで撮りまくっていた。

 それまで辺野古新基地建設反対を訴え市長を2期8年務めた稲嶺進氏が敗れ去った瞬間に立ち会うことになった。敗北が明らかになった稲嶺陣営の選挙事務所で、稲嶺氏の隣の席には、翁長雄志県知事が悲痛な表情で座っていた。ちからで押し倒す方法にはいろいろなやり口があるものだと思い知らされた。

 あれから4年。「どうせ辺野古の新基地建設工事は反対しても止まらないのであれば、自分たちの生活を豊かにしてくれればいい。コロナ禍もこの心情に追い風になった」。今後、マスコミでは、こういう手合いの解説が溢れかえるだろう。沖縄県に軍事基地(米軍、国連軍および自衛隊)を一方的に押しつけておいて、その可否を地元住民の地域選挙での判断にゆだねている構図全体が「いじめ」ではないのか。

 今回の選挙では、さらには南城市の市長選挙でも、オール沖縄推薦の瑞慶覧長敏氏が再選を果たせず、自公推薦の古謝景春前市長に破れ去った。この意味するところは小さくない。沖縄・選挙イヤーの幕開けはこのような結果となった。僕はと言えば、オミクロン感染の拡がりもあって、今回は現地入りを断念したが、行ってこの目でみておくべきだったか。忸怩たる思いだ。わかったようなことは言うまい。

「伊藤詩織さん、二審も勝訴」か「双方に賠償命令」か

1月24日(月) 早稲田大学の秋学期最終授業とゼミ。細心の注意を払いつつ、早稲田構内に出かけて行って、講義もゼミも、リアルとオンラインのハイブリッド形式で実施した。学生さんたちも、本当に熱心なことに(モグリも含めて)、教室に数人がやって来た。

 ゼミでは『河瀨直美が見つめた東京五輪』(NHK・BS1スペシャル)の後半部分をみんなで視聴し、ディスカッションした。なるほど、通しで全体をみると、こういう作品だったのか。問題の「字幕」部分なるものもみた。このメイキングを制作したNHKの意図と、被写体となっている河瀨監督、島田角栄監督(この2人は一種の師弟関係にあることが番組内でも語られていた)らの意図とが交錯していて、あの問題のシーンがなぜあのような形であそこに据えられていたのか、男性を取材していたのは島田監督で、それは河瀨監督が「私には撮れないもの」として期待していた撮影対象だったという構図は、わかった。ある種の意識的な或いは無意識的な意図によって、あのような形になったのか。後味が悪い。

1月25日(火) 朝、プールへ行き泳ぐ。ストレスが幾分解消されたな。その後、『報道特集』の定例会議をオンラインで。

 13時から韓国の諸情勢についてMさんから話を聞く。与野党の支持率がまたひっくり返ったという。最終的には今後予定されているテレビ討論が大きな節目になるのではないかと言う。最後の最後まで勝敗はわからないと。

 佐渡金山のユネスコ世界遺産登録申請問題。これまで岸田内閣は慎重姿勢だったが、自民党内の右派、具体的には安倍晋三元首相らの動きによって、今週の金曜日に強引に申請の方向にもっていくのではないか、と韓国政府は危惧しているとのこと。歴史認識の問題は根が深い。そもそも佐渡金山に朝鮮半島からの労働者が従事していた事実がどのように表現されていたのか(あるいは表現されていなかった=抹消されていた)を多くの日本人は知らない。

 あしたの早稲田大学修士論文の口頭試問の準備作業。時間がかかったがこの作業自体が面白かった。

 午後、伊藤詩織さんの元TBS記者・山口敬之氏を相手取った損害賠償請求の控訴審判決が出た。東京高裁は、一審同様「同意がないのに行為に及んだ」と認定し、山口氏に332万円の支払いを命じた。一方で、山口氏側の「薬物を使われた可能性がある」と著書に記したことは、名誉棄損にあたるとする山口氏側の主張も認め、伊藤さん側に55万円の支払いを命じた。夕方のニュースのバタバタの中でみていたが、「詩織さん、二審も勝訴」というメディアと「双方に賠償命令」というメディアに大きく分かれていたように思う。きちんと判決を吟味しなければならない。

 山口氏は上告するという。一方で、TBSテレビは

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