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軽井沢型テレワークがどこにも真似できない深い理由~自主財源107億円の町に年間500人移住

日本人の「働き方」の変革期に必要な「サロン文化」をいかすという 発想

芳野まい 東京成徳大学経営学部准教授

拡大矢ヶ崎池から大賀ホール、離山、浅間山を望む=長野県北佐久郡軽井沢町(鈴木幹一さん撮影)

 軽井沢は明治以降、政治や経済、文化の重要人物がバカンスを過ごしたり、重要な活動や決定を行ったりしてきた特別な場所であった。一方で、昭和の高度成長期以降、大衆消費文化の発展とともに、庶民の憧れのリゾートともなった。コロナ前には、年間に800万人以上もの観光客が訪れていた。

 近年は、軽井沢に家(別荘含む)を持ち、東京の会社で働くというライフスタイルを選ぶ人も増えている。とくにコロナ禍では1年で数百人もが移住した。こうした軽井沢への移住者・観光客の流れは、近隣の御代田、小諸などの町まで広がり、軽井沢をゲートウェイとした一大経済圏が生まれつつある。

 2024年には、北陸新幹線が福井県まで開通。軽井沢町と福井県の間で連携協定が結ばれる予定である(基礎自治体と県との県をまたいだ連携は珍しい)。東京から福井までをつなぐ大経済圏の重要な拠点としても、軽井沢の重要性がますます高まりそうだ。

 そんな多彩な可能性を持つ軽井沢を論じる連載を「論座」で始める。時代に即して、相貌をダイナミックかつ繊細に変化させる軽井沢の姿をつまびらかにし、日本の歴史を映す「鏡」といえる軽井沢を通して日本の未来を見通したい

 第一回目のテーマは、今の日本の大きな課題である「働き方」だ。軽井沢に住み、東京の会社で働くというライフスタイルを選ぶ人が増えていると先述した。軽井沢が彼/彼女らを引き寄せる「理由」を見据えつつ、ライフスタイルの中核である「働く」ことの意義、将来の働き方についてまで、射程を広げて考えてみたい。

 鼎談の相手は、軽井沢と東京の二拠点生活をはじめて23年、リモートワークの実践・推進・研究に携わってきた鈴木幹一さんと、総務省で働き方改革などに取り組み、退官後はワークスタイル変革や地方創生などのコンサルタントとして全国を駆け回る箕浦龍一さん。暖炉の火が暖かく燃える鈴木さんの軽井沢の別荘で1時間半、じっくり語り合った。

(構成 論座編集部・吉田貴文)

鈴木幹一(すずき・かんいち) 信州大学社会基盤研究所特任教授(ウエルネス・ライフスタイル学)
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1957年生まれ。読売広告社本社営業統括補佐、エステー取締役などを経て現職。福井県立大学地域経済研究所客員研究員、福井県観光連盟観光投資特別顧問、日本ワーケーション協会特別顧問、軽井沢ソーシャルデザイン研究所代表理事、軽井沢リゾートテレワーク協会副会長、小諸市政策アドバイザー(ウエルネス・ライススタイル分野)、糸魚川市ワーケーションアドバイザー、軽井沢しらかば会会長なども務める。軽井沢リゾートテレワーク歴23年。
箕浦龍一(みのうら・りゅういち) 官民共創未来コンソーシアム理事
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1966年生まれ。元総務省職員。退職後はワークスタイル変革やワーケーション推進、DX、若手公務員育成などの分野でフリーランスのコンサルタントとして活動中。総務省ではオフィス改革やワークスタイル変革、若手の人財育成に取り組み、人事院総裁賞(職域部門)受賞。軽井沢リゾートテレワークのプロジェクトなどワーケーションの推進に尽力。地域活性化センターシニアフェローとして地方公務員の人材育成にも取り組む。

拡大鼎談に参加した(右から)鈴木幹一さん、箕浦龍一さん、芳野まいさんの3人(撮影・吉田貴文)

テレワーク・ワーケーションの場として移住

――日本では近年、「働き方改革」が懸案になっています。より生産的で創造的な働き方はないか、時短やオフィス改革といった様々な選択肢のひとつに、テレワークやワーケーションがあります。オフィスの場所や時間に縛られずに仕事をする働き方です。コロナ禍以前の2017年から、軽井沢ではテレワークやワーケーションの機運が高まっていました。コロナ禍でそれが加速し、移住する人が増えているようですが……。

鈴木 増えていますね。軽井沢の人口は約2万人。このところ年間200人ぐらいずつ増えていましたが、コロナ後は1年で500人も増えた。そのあおりでしょうか、“大軽井沢圏”を形成する隣の御代田町も増加しました。長野県内で人口が増えた自治体はこの二つだけです。コロナで柔軟な働き方が浸透、仕事のIT化が一気に進み、テレワークやワーケーションなどの勤務を導入する企業も増え、月に数回しか会社に行かなくなったのを機に、軽井沢に移住したり、別荘を持ったりする人が増えたのでしょう。同時に東京から軽井沢に本社機能を移転する企業も出始めてます。

――軽井沢といえば日本有数の「別荘地」です。これまで移住してきた」人と違いはありますか。

鈴木 2000年頃までは軽井沢に移り住むのは現役を引退した人や富裕層が中心でした。東京の家との間を行ったり来たりする二拠点居住の人も多かった。それが、15年ほど前から、「ライフスタイル移住」が目立つようになりました。子どもを自然の中で育てたい、好きな山で暮らしたい、といったライフスタイル重視の子育て世代や独身の人たちです。仕事をやめて新しい仕事を始めるケースも少なくありませんでした。

――最近はどうですか?

鈴木 仕事はやめず、豊かなライフスタイルの実現の場として軽井沢を選んでいる人が多いようです。彼らに共通するのは、高学歴、元一流企業勤務、家族との時間を大切にする、地域貢献に関心がある、人的ネットワークの構築が得意、などです。生活にワークをうまく取り入れて、ごく自然にテレワークやワーケーションをしているという印象です。彼らと話をすると、「毎日がワーケーション」という言葉がよく出ます。

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筆者

芳野まい

芳野まい(よしの・まい) 東京成徳大学経営学部准教授

東京大学教養学部教養学科フランス科卒。フランス政府給費留学生として渡仏。東京成徳大学経営学部准教授。信州大学社会基盤研究所特任准教授。一般社団法人安藤美術館理事。一般財団法人ベターホーム協会理事。NHKラジオフランス語講座「まいにちフランス語」(「ファッションをひもとき、時を読む」「ガストロノミー・フランセーズ 食を語り、愛を語る」)講師。軽井沢との縁は深く、とくにアペリティフとサロン文化の歴史について研究している。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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