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入管収容をどう変えるか~「司法審査導入」だけでは足りない。弁護人の保障を

収容の危機にさらされた外国人をサポートするために

児玉晃一 弁護士

 現在の入管収容が、入管内部の判断だけで可能であることは様々な方面から批判を浴びています。

 国内では2019年3月に東京弁護士会が「出入国管理及び難民認定法の収容に関連する規定の改正を求める意見書」を公表し、入管収容への司法審査の導入が必要であることを訴えました。

 2021年2月18日に野党共同で参議院に提出された入管法改正案も、事前の司法審査を必要とする条項が盛り込まれていました(注1)

求められてきた司法審査導入……それだけでは画竜点睛を欠く

 2020年9月に国連の恣意的拘禁作業部会が2人の難民申請者による個人通報申立てに対して示した見解パラグラフ89では、「彼らが収容の適法性に異議を唱えるために司法当局 に出頭する機会を与えられたことは一度もない。また、国際法で求められているように、時の経過による状況の変化に留意しながら、収容の適法性を継続的に確保するための定期的な司法審査も行われていない」としています(注2)。その上で、「作業部会は、日本が自由権規約の下で負う義務との整合性を確保するため、出入国管理及び難民認定法を見直すよう政府に要請する。」としています(同パラグラフ104)。

 また、2021年の通常国会に提出された入管法案に対しては、国連の特別報告者らの共同書簡が「同法案は移住(出入国管理)における収容令書の発付に対する司法審査を想定しておらず、関連する国際的な人権基準を満たしていません。」と指摘しました(注3)

 ですが、最近担当した刑事事件で、単に司法審査を導入するだけでは画竜点睛を欠くということを痛感しました。司法審査を実質化するには、対象となる外国人をサポートする法的専門家の存在が必要不可欠です。

東京出入国在留管理局=東京都港区、朝日新聞社ヘリから

取り消された勾留~被疑者側に立つ専門家がいれば

 私は、ある事件の被疑者国選弁護人に選任され、とある日の夜に被疑者とはじめて接見しました。この方は、暴行容疑で現行犯逮捕され、その翌日検察官が勾留請求をし、さらにその翌日、裁判官によって勾留決定がされたのでした。そのままでは10日以上拘束が続く可能性がありました。

 ですが、私は接見した日のうちに諸々の資料を揃えて、裁判官の勾留決定がおかしいという不服申立て(準抗告といいます。)をしたところ、翌日勾留決定が取り消され、釈放されました。

 事件の内容を詳しく述べることはできませんが、初回接見時、ご本人の話を聞いて、思ったのは、「なんでこの事件で、逮捕したり、勾留したりするのだろうか」ということでした。

 逮捕は現行犯逮捕なので警察官、勾留請求をしたのは検察官、勾留決定をしたのは裁判官です。誰も、この人を拘束しておく必要はないと考えなかったのか不思議でなりませんでした。特に、裁判官。捜査機関が、被疑者を捕まえておきたいというバイアスがあるのは理解できますが、それが必要かどうかを中立公正な立場から判断すべき裁判官がなぜこの勾留を認めてしまったのでしょうか。

 ですが、ここまでに、被疑者の側に立って活動できる専門家の存在がなかったことも、結果的に取り消された勾留がなされた大きな原因だったと思います。私が初回接見後に行ったのは、本人の言い分を取りまとめたり、その裏づけ資料を取り寄せたり、あるいは被害者の方と会って示談をしたり、身元引受人の署名をもらったりという活動でした。これらは、捜査機関側はもちろん、中立公正な立場にある裁判官も行うことはできません。だからこそ、日本弁護士連合会では、現在勾留決定後でないと国選弁護人が選任できないのは不十分であり、取調べを受ける前に弁護士の助言を受ける機会の保障や、逮捕段階からの国選弁護人選任などを強く主張しているのです(注4)

代理人をどう確保するか~任意に選任できるだけでは不十分

 これまで、私も含めて、入管収容に司法審査を求めていた意見の中で

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