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部活動は「不要不急」なのか?~文科省の要請がもたらす「青春の自粛」

子供の将来に負の影響、文化芸術活動も否定/感染症対策と活動は「両立可能」

小田博士 神奈川県大和市議会議員 元産経新聞記者

拡大全国知事会の求めを受け、政府の新型コロナ対策分科会が2カ月半ぶりに開かれ、オミクロン株の特性をふまえた感染防止策を打ち出した。会見で、学校などでのクラスター事例と、「特に感染リスクが高い教育活動は控える」とする対策を、スライドで説明する尾身茂会長=2022年2月4日

文科省の自粛要請――子供の未来を第一に考えているのか

 政府は、オミクロン株に変異した新型コロナウイルス感染症の感染拡大を受けて、全国の36都道府県にまん延防止等重点措置を発令している。文部科学省は4日、「10代以下の感染者数の増加が急速に進んでいる」として、感染症対策の徹底を求める事務連絡を全国の都道府県教育委員会に発出し、授業における合唱や管楽器演奏、調理実習のほか、感染拡大リスクの高い部活動の自粛を要請した。

 全国知事会が「学校などの教育関連施設で感染が拡大している」と対応指針を早急に示すよう提言したことを踏まえ、政府の感染症対策分科会を経て、対策強化に踏み切った。これに前後して、部活動を原則休止とするケースが全国的に相次いでいる。だが、運動部の部活動が停滞すれば体力低下に拍車をかけるだろうし、スポーツや文化面で活躍したい子供たちの夢を奪うことにもなりかねない。

 地方議員をしている筆者は、子供に対するマスクやワクチン接種の見直し、教育環境の回復を求める要望を受けることがある。その思いを一言でまとめると「将来を担う子供たちのことを第一に考えてほしい」ということだ。筆者が時折受け入れているインターンの大学生からは「オンライン授業ばかりで友人関係を作りづらい」との悲痛な声も聞く。

 子供や若者は重症化リスクが低いが、感染拡大の原因になるとして「青春の自粛」を余儀なくされており、不憫でならない。本稿では部活動の意義、役割を考えたうえで、事務連絡が抱える問題点を指摘したい。

「生活がパタンと止まった」―ショックのまま卒業

拡大第103回全国高校野球選手権大会の開会式で選手宣誓をする小松大谷高校の木下仁緒主将=2021年8月10日、兵庫県西宮市の阪神甲子園球場
 「1年前、甲子園という夢がなくなり、泣き崩れる先輩たちの姿がありました。しかし、私たちはくじけませんでした。一歩一歩、歩んできました。夢の甲子園で、高校球児の真(まこと)の姿を見せることを誓います」

 昨年8月10日に行われた全国高校野球選手権(夏の甲子園)の開会式。石川県代表、小松大谷高校の木下仁緒(にお)主将は選手宣誓を高らかに行い、大きな拍手を受けた。木下選手は憧れの夢舞台に出場できたから、まだよい方だ。コロナ禍では、運動部の様々な大会の中止が相次いでおり、部活動の運営は苦境に立たされている。

拡大2020年4月、休校で部活動も休止中だった栃木県立今市高ホッケー部の部室前には練習用のスティックがかけられていた。高校3冠を目指して各自でトレーニングを続け連絡を取り合ってもいたが、同年度のインターハイは中止になった
 東京都内の私立大学に通う1年の女子学生(19)は高校2年の時、ホッケー部でインターハイに出場した経験がある。だが、コロナ禍が発生した2020年、高3生として引退試合となる同大会が中止となってしまった。「部活動は練習も大会も中止となり、生活がパタンと止まってしまった。ショックでどうしたらよいか分からなかった」と当時を振り返る。

 感染リスクの高い部活動の休止を求める文科省の事務連絡については「期間をハッキリさせないと先行きが見えないのではないか。中学生や高校生は辛いだろう」と気遣う。

部員が急減、武道人口の減少に拍車

 中学校の保健体育では2012年度から、武道やダンスが必修化されている。改正された教育基本法で、「伝統と文化の尊重」が掲げられたことを踏まえた対応だ。武道人口の底上げも期待されるが、コロナ禍における部活動では、中学校や高校の部員自体が減ってしまうケースもあるという。

拡大部活動が3カ月半ぶりに再開された2020年6月、前橋商業高校剣道部では、飛沫防止のため面の中に透明なシールドをつけて稽古していた=前橋市

剣道部員3分の1になった学校も

 神奈川県内の県立高校の剣道部の顧問教諭は「うちの学校では、感染不安から部員が3分の1に減ってしまった。剣道は、面マスクの内側でフェイスガードをしている。コロナ禍でも何とかできるように工夫を重ねており、感染した事例は他の種目と比べても圧倒的に少ない」と話す。

 だが、感染拡大防止と部活動の両立に対する理解はなかなか進んでいないようだ。保護者からは「感染すると兄弟が大学受験できなくなってしまうので、部活を休ませてほしい」という声も寄せられているという。

拡大神奈川県大和市の複合スポーツ施設「大和スポーツセンター」はワクチン接種会場として使われ、一部のイベントや教室が中止となっている=2022年2月16日、筆者撮影
 剣道などの大会を行う場となるスポーツ施設が、新型コロナウイルス感染症のワクチン接種会場となるケースもある。会場自体が使えなくなり、文科省の事務連絡以前に大会を実施できる環境がなかなか整わない。

 新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長は、剣道愛好家として知られる。4段の腕前を有しており、月刊誌『剣道時代』の2020年9月号では「小学生の運動会で一等賞を取った時の気分でした。審査は励みになります」と昇段の喜びを語ったこともある。武道家の尾身氏は、部活動の苦しい実情をどのように見つめているのだろう。

柔道連盟、五輪で躍進も会員15%減

 昨年夏の東京オリンピックでは、過去最多となる9個の金メダルを獲得した日本のお家芸、柔道も、その足元は揺れている。全日本柔道連盟(全柔連)の2020年度の会員登録者数は12万1532人となり、コロナ前の前年度より2万2017人(15%)の大幅減となった。

 コロナ発生前から毎年、数千人程度が減少する右肩下がりの傾向にはあったが、コロナ禍が一気に追い打ちをかけてしまっている。

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筆者

小田博士

小田博士(おだ・ひろし) 神奈川県大和市議会議員 元産経新聞記者

1975年1月生まれ。神奈川県大和市出身。上智大学経済学部経営学科卒業後、産経新聞社に入社。整理部を振り出しに千葉総局(県警、県政)、社会部(文部科学省、司法)、政治部(官邸、与党、野党、防衛省など)で記者生活16年。国政、地方行政、選挙や教育問題をはじめ様々なジャンルを取材した。記者の経験を活かして郷土の発展に尽くしたいと政治家に転じ、2015年4月に大和市議会議員に初当選。現在2期目(自民党)。早稲田大学大学院政治学研究科修了。公共経営修士(専門職)。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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