赤木智弘(あかぎ・ともひろ) フリーライター
1975年生まれ。著書に『若者を見殺しにする国』『「当たり前」をひっぱたく 過ちを見過ごさないために』、共著書に『下流中年』など。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
外国産あさりを買い付けて、日本国内で育てれば「国産」と名乗ることはできる。
しかしそれには「日本国内での生育期間が外国での生育期間を超えること」が必須条件である。だが実態は砂浜に撒いて数日から1週間程度の蓄養で収穫、出荷を行っていたという。
出荷に適したサイズにするまでの育成期間は1年以上。国内で数週間育てただけではとても国産と名乗ることができないため、産地偽装と指摘されたのである。
こうした不正が横行するようになった原因は、その1つに熊本でのあさりの不漁が考えられる。
熊本県産あさりの漁獲量は、1977年には6万5732トンで全国シェア40%と日本一を誇っていた。だが、2008年に6000トン程度あったのが翌年に2000トンを切り、2013年以降は1000トン以下のまま回復していない。自然を相手にする業種である以上、不漁という問題は避けられないが、熊本県産のあさりはもはや壊滅的な状況であり、今後の収穫量増加は見込めないと考えてもやむを得ないだろう。
しかしあさりを採って出荷することで生計を立てている会社は「不漁だから仕方ない。来年からは別の業種にしよう」というわけにはいかない。これまでの設備を新しいものに変えるのにも莫大なお金がかかる。会社を守り、従業員を守るためには是が非でも「熊本県産」あさりを出荷し続けなければならなかったのではないか。
個人が転職をするのと違い、会社がこれまでやってきた業態を転換するのは大変だ。そこでなんとか仕事を続けようとした結果が産地偽装なのだろう。
だが、そんなことは企業の理屈だ。正直に中国産や韓国産として売ればよかったのではないか、と思う人もいるかも知れない。
しかし
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