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オンラインに苦しむ商談展示会の積極的未来像を

出展社も来場者もリアルを求め、萎縮する現在

倉沢鉄也 日鉄総研研究主幹

 東京ビッグサイトや幕張メッセ、インテックス大阪など大会場で年200日以上行われてきた商品見本市・商談展示会。ご推察のとおり、コロナ禍大打撃分野の一つである。会場を貸す側、イベントを主催する側、そこにブース出展してビジネスPRをする側、そのPRを受け取り購買情報の収集とする来場者側、全員が機会損失をし続けている。

 筆者は主にBtoB(法人営業)目的の展示会にブース出展する企業からの企画検討の相談を受け、少々のアドバイスを送り、当日は他社状況を調査する(相談主は自分がブースに貼り付いていて他社調査できないから)、という仕事が少々あり、この分野について俯瞰(ふかん)する機会がある。関係者にはありきたりのことかもしれないが、世にあまり知られていない論点を紹介したい。

主催者Webサイトの宣伝力の弱さ

 授業や会議がオンライン化し、「人数制限などで一定数はリアル化、残りはオンラインというハイブリッド」も出現したように、展示会場と個々ブースも、単なる中止を経て、完全オンライン化や、併催ハイブリッド化に向かった。しかしイメージしてもらえばわかるとおり、人が中に入る規模の展示ブースのインパクトをオンラインで再現することは至難の業だ。

 巨大な企業ロゴ、大画面の映像、実物を閲覧・触れることのできる説得力と、配布物やパネル資料などを前に説明員が(くどくても)質問対応してくれる丁寧さ、それらサービスの対価として名刺交換せざるを得ないことと、などの“密着度合い”は、おそらく会議や授業よりもハードルが高く、ライブコンサートやテーマパークなどエンタメ業界でのハードルの高さに近いものだろう。

以前の見本市拡大2018年11月に東京・有明で開かれた「日本国際工作機械見本市」。広い展示ブースで丁寧な商品説明が行われた

 オンライン展示会の見た目はどうなるか。多少はブースのような見た目を作れたとして、しょせんはPCの画面の中、Web画面でのHTMLリンクの連続、にすぎない。バーチャルリアルティーで構築するには費用がかかりすぎ、得られる効果は同じ。説明パネルを印刷出力しなくていいとか、ブース造作を作らなくていいとか、名刺が確実にもらえる(画面遷移の条件にすればいいだけ)とか、のコストダウンを喜ぶ出展者などいない。販売拡大メッセージのインパクトの弱さ、そして主催者Webサイト自体の宣伝力の弱さは、ダイレクトメールをばらまいてもいかんともしがたい。コストが下がっても効果はそれ以上に下がる。販売を拡大するための費用は、販売を拡大できなければムダとして切り捨てられ、販売拡大の実績があれば維持せざるを得なくなるものだ。

 そもそも宣伝とは、時刻を固めて人を振り向かせて購買意思決定させるもので、人は時間が過ぎるとどんどん忘れていくものだ。商談系展示会は通常2~3日程度の開催だが、Webが1週間なり1カ月なりオープンしていても、開催メッセージのインパクトを持った2~3日でWebサイト来訪者は飽和する。

 BtoBの商材であれば、その顧客先のBtoC(消費者向け)市場次第とはいえ、コロナ禍でそうそう劇的に需給が変化するものではない。むしろ別途話題の、サプライチェーンに関わる諸々(もろもろ)の障害、その結果の品不足、のほうが問題だ。顧客の購買決定までの意思決定期間も長く、粘り強い拡販~営業策が必要で、言わば“たいまつを絶やしてはいけない”性質の事柄だ。それをWebで再現できている、もうリアル展示会など不要、という話は、2年たっても勃興してこない。

 全部Webで何が問題なのか、もうリアル展示ブースなど時代遅れ、来場者としての自分はWebで何も問題ない、という種のことを言う人は、新聞雑誌~ラジオテレビ~インターネットと続く広告メディアの変化の中で市場規模と広告主がどう変遷してきたのか勉強し直すことを強く勧める。日本経済は、世界経済は、その人が思うような数量統計になっていない。歴史的に明らかなことはここで論じない。

 コロナ禍によって、リアルな展示ブースでも説明員のWeb画面化、配布物手渡しの自粛、そもそもの入場総量制限、などの措置を強いられる。ロゴ入りアルコールスプレーのノベルティー配布という切ない事例も出現している。そもそも規制なし~マンボウ~キンキュー、という振れ幅の中で展示ブース説明準備は3~6カ月前から企画・調整するもので、強行開催+出展見送り=ブース設置予定地の“お墓”化、出典希望+主催者中止=全額返金も販促機会損失、という痛々しい事態が生じる。

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筆者

倉沢鉄也

倉沢鉄也(くらさわ・てつや) 日鉄総研研究主幹

1969年生まれ。東大法学部卒。(株)電通総研、(株)日本総合研究所を経て2014年4月より現職。専門はメディアビジネス、自動車交通のIT化。ライフスタイルの変化などが政策やビジネスに与える影響について幅広く調査研究、提言を行う。著書に『ITSビジネスの処方箋』『ITSビジネスの未来地図』など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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