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中国とロシアに屈したIOCの姿をあらわにした北京冬季五輪

人権、ドーピング問題に背を向け皮算用に走るバッハ会長

小田光康 明治大学ソーシャル・コミュニケーション研究所所長

NBCの五輪放映で過去最少の視聴者数

 91カ国・地域からの2877選手が参加した北京冬季五輪が2月20日、閉幕した。

 北京市内の国家体育場、通称「鳥の巣」で習近平国家主席や国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長が出席して行われた閉会式は、「ONE WORLD」や「天下一家」といった世界的な連帯を意味するスローガンで染められた。閉会の式辞でバッハ会長は「皆さんは分断を克服しましたオリンピックの仲間はみな平等であることを示しました。オリンピックの結束する力は、分断する力よりも強いのです」と力説した。

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 オリンピック憲章には、人間の尊厳の保持や平和な社会をめざし、調和ある発展のためにスポーツを活用することが五輪大会の目的とある。オリンピックはフェアプレイの精神が下敷きになる世界平和の祭典であったはずだ。このために五輪停戦決議も結んだ。にもかかわらず、ウクライナでのロシアの軍事介入が進んでいる。

 しかもだ。冬季五輪のテレビ中継人気に赤信号が点滅した。五輪に世界最高額の放送権料を支払う米国テレビネットワーク、NBCの北京五輪の1日あたりの平均視聴者数が、前回の2018年平昌五輪から900万人も減少して1140万人となった。前大会から半減したこの数字はNBCの五輪放映で過去最悪だ。

 ちなみに2月13日に開かれたアメリカン・フットボールの頂点を決める「スーパーボウル」一試合で1億1200万人の視聴者をたたき出した。皮肉にも、過去5年間の全米テレビ番組で最高の数字であり、これを放送したのも同じくNBCだった。こうなるとIOCの大スポンサー、NBCも放送権料について再検討せざるを得ないだろう。

 今回の北京大会では人権侵害や外交ボイコット、ドーピングやそして不可解な審判などの問題が噴出した。こうした状況のどこが分断の克服や平等なのだろうか。五輪の理念がないがしろにされた北京大会はなにを目的に、だれのために開催されたのであろうか。

 筆者は半年前の東京大会で馬脚を現した「ぼったくり男爵」ことバッハ会長への不信感と共に、オリンピックそのものへの虚脱感を抱いた。IOCのバッハ会長はなぜ、五輪の理念をねじ曲げてまでして、大会開催国の中国や五輪強豪国のロシアに媚びへつらうのであろうか。本稿ではこれについて論じたい。

中国政府によるウイグル族の弾圧に抗議して北京五輪のボイコットを訴えるボード=2021年7月、カナダ・オタワ Wirestock Creators/Shutterstock.com拡大中国政府によるウイグル族の弾圧に抗議して北京五輪のボイコットを訴えるボード=2021年7月、カナダ・オタワ Wirestock Creators/Shutterstock.com

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筆者

小田光康

小田光康(おだ・みつやす) 明治大学ソーシャル・コミュニケーション研究所所長

1964年、東京生まれ。米ジョージア州立大学経営大学院修士課程修了、東京大学大学院教育学研究科博士課程満期退学。専門はジャーナリズム教育論・メディア経営論、社会疫学。米Deloitte & Touche、米Bloomberg News、ライブドアPJニュースなどを経て現職。五輪専門メディアATR記者、東京農工大学国際家畜感染症センター参与研究員などを兼任。日本国内の会計不正事件の英文連載記事”Tainted Ledgers”で米New York州公認会計士協会賞とSilurian協会賞を受賞。著書に『スポーツ・ジャーナリストの仕事』(出版文化社)、『パブリック・ジャーナリスト宣言。』(朝日新聞社)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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