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五輪停戦決議を軍事侵攻の具にしてきたプーチン

日本人は「平和の祭典」という幻想から目を覚ませ

小田光康 明治大学ソーシャル・コミュニケーション研究所所長

二度も顔に泥を塗られた習近平、それでもロシアを擁護

 ここで、これら五輪停戦決議が破られた五輪開催地の地政学的な特徴について観てみたい。ジョージアに侵攻した2008年と、ウクライナに侵攻した2022年はロシアと結びつきの強い中国の首都・北京だった。そしてウクライナ領だったクリミア半島を併合した2014年はジョージアとクリミア半島の中間に位置する自国領内のソチだった。

 最大収容人数9万人を誇る巨大な北京国家体育場(通称・鳥の巣)で開かれた2008年夏季五輪の開会式は、習近平国家出席にとって国威発揚を強くアピールする絶好の機会だった。五輪停戦決議にはロシアも中国も賛同していた。だがこの当日、ロシアがジョージアへ侵攻を開始した。習主席にとって、プーチン大統領によって顔に泥を塗られたに等しい。

 今回の北京冬季五輪の開会式で、習主席はIOCのバッハ会長と国連のグテーレス事務総長と共にプーチン大統領と顔を合わせた。その際、北京夏季五輪と同じ蹉跌を踏まないよう、プーチン大統領に釘を刺してもおかしくない。しかし、ここでもロシアは、五輪停戦期間中にもかかわらずウクライナに軍事侵攻に踏み切った。習主席はプーチン大統領から繰り返し顔に泥を塗られたのだ。

 これに対して、中国外務省は記者会見で「この問題は複雑な歴史的背景とさまざまな要素が作用した結果だ。中国と西洋人は違う。中国人は結論を急がない」とロシアを非難することは無かった。2014年のクリミア半島侵略で欧米諸国から経済制裁を科されたロシアに対して、中国は天然ガスの供給など約50兆円の経済援助をした。これらからロシアの五輪停戦決議破りは極めて政治的かつ計画的であったことが想像に難くない。しかも、中国と符丁を合わせたかのようだ。

習近平国家主席(新華社)拡大習近平国家主席(新華社)

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筆者

小田光康

小田光康(おだ・みつやす) 明治大学ソーシャル・コミュニケーション研究所所長

1964年、東京生まれ。米ジョージア州立大学経営大学院修士課程修了、東京大学大学院教育学研究科博士課程満期退学。専門はジャーナリズム教育論・メディア経営論、社会疫学。米Deloitte & Touche、米Bloomberg News、ライブドアPJニュースなどを経て現職。五輪専門メディアATR記者、東京農工大学国際家畜感染症センター参与研究員などを兼任。日本国内の会計不正事件の英文連載記事”Tainted Ledgers”で米New York州公認会計士協会賞とSilurian協会賞を受賞。著書に『スポーツ・ジャーナリストの仕事』(出版文化社)、『パブリック・ジャーナリスト宣言。』(朝日新聞社)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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