ウクライナより愛をこめて③ 「ウクライナの清志郎」に聞いた
[3月2日~3月5日]空襲警報、ヴァカルチューク、ルーマニア国境の検問ゲート……
金平茂紀 TBS報道局記者、キャスター、ディレクター
国境地帯の村へ──これが21世紀の戦時下の光景か
3月3日(木) 雪が降り続いている。寒い。体内時計が完全に狂ってしまった。午前6時半には目が覚めてしまった。ろくに寝ていない。
この宿舎でもWi-Fi環境はあるので、世界のニュースはどんどん閲覧できる。日産の元代表取締役グレッグ・ケリー被告に一部有罪判決が出たと。東京にいたならば確実に取材していた裁判の判決公判だ。ケリー被告は、カルロス・ゴーン被告の報酬約93億円を実際より少なく有価証券報告書に記載したとして起訴されていた。東京地裁は、罪に問われた8年間分の虚偽記載のうち7年間分について、ケリー被告に「報酬隠しの認識があったとは認められない」として共謀を否定し、無罪とした。
それにしても、起訴事実の大半は無罪、2017年分に限って有罪認定とは、判決自体がきわめて政治的な意味合い(つまりケリー被告を全面無罪にするとゴーン被告の有罪認定に支障をきたすインパクトがあるのでまずい)を帯びている気がしてならない。検察のいわゆる「国策捜査」(当時の安倍政権の都合と検察の失地回復の野合)の結末は、司法というムラ社会のなかでは裁判所も共犯関係にある。
バイデンの一般教書演説の全文を読む。「自由は常に専制に勝つ」「光が闇を打ち負かす」「ロシアのウソに真実で対抗した」「第二次大戦の後、欧州での平和と安定を確保するためにNATO(北大西洋条約機構)は創設された。アメリカは他の29カ国とともに、その一員で、アメリカの外交、アメリカの決意は大きな意味をもつ」。
──敵か味方か。二分法の考え方こそが怖ろしい。結局、権力とは何か、なぜ権力は人間を狂わせるのかという普遍的な命題の周りを僕らはぐるぐる回っている。そう言えば、日本にいたならば、今日は福島第一原発の構内の取材をしているはずの日だった。残念。
午前11時に宿舎を出て、土曜日の中継場所の選定作業。Kの提案でウクライナ・ルーマニア国境地帯のテレブレチェ村の検問ゲート付近ではどうかということで状況をみに行く。いい考えだ。あわせてネット環境のチェックを試みる。
2月25日に僕らがルーマニアからここに着いた時にいた長距離トラックの長蛇の列は
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