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どこか変やで「関西ジャーナリズム」~反権力の牙城はどこへ 背後に維新の影

「報道と権力の距離」やメディアの倫理が問われる出来事で続出し……

徳山喜雄 ジャーナリスト、立正大学教授(ジャーナリズム論、写真論)

 「関西ジャーナリズム」という言葉がある。大阪は権力のお膝元にあるのではなく、商人の町で「お上なにするものぞ」との気風があり、中央と距離をおいた反権力のジャーナリズムが育ってきた。

 だが、ここのところ関西、とりわけ大阪に拠点を置く報道機関の動きがおかしい。

 毎日放送(MBS)のトークバラエティー番組が「放送の政治的公平性」を問われ、批判を受けた。読売新聞大阪本社が大阪府と「包括連携協定」を結んだことで、「都合のいい広報機関になってしまう」と危惧されている。公共放送のNHK大阪拠点放送局は、BS番組「河瀬直美が見つめた東京五輪」で事実と異なる字幕を付け、揺れ動いている。

 いずれも「報道と権力の距離」やメディアの倫理が問われる出来事で、関西ジャーナリズムはどうなっているのか、という疑問が渦巻くこととなった。

拡大毎日放送=大阪市北区茶屋町

政治的公平性を無視したMBS

 リベラルな番組づくりで知られたTBS系のMBSは、元日に放送した番組「東野&吉田のほっとけない人」に、日本維新の会の元代表の橋下徹氏、大阪市長の松井一郎代表、大阪府知事の吉村洋副代表の3人をそろって出演させ、縦横に語らせた。

 この番組は制作スポーツ局が担当する関西ローカルで、吉本興業所属のタレント東野幸治とブラックマヨネーズのボケ役の吉田敬が番組進行を務めた。問題となっている国会議員の「文書通信交通滞在費」や維新が急伸した「2021年衆院選の評価」「大阪都構想」などの話とともに、将来の総理大臣について一方的に吉村府知事を推し、放送の政治的公平性を考えると、問題の多い番組になった。

 ほかに政党関係者の共演がないなか、3人の独断的な語りは2時間番組(14時30~16時30分)のうち約40分間におよび、視聴者から「維新に偏っている」「政治的に中立でない」との苦情が多数寄せられた。外部識者からなる番組審議会でも番組内容について厳しい指摘があり、1月17日に専務をリーダーとする調査チームを立ち上げていた。

維新におもねる番組作り

 3月11日に公表された社内調査報告書の概要によると、番組内容を決める総合演出が「過去の松井氏、吉村氏が出演した回は明らかに高視聴率で、3人が出てもらえたら面白いと思った」とヒアリングに答えており、政治的公平性よりも視聴率本位に判断していることが分かる。

 報告書は、問題のありかとして、「視聴者には政治的に偏っていると映るのではないか?」ということを、制作部門や編成部門で想像し意見し議論もしなかったことにあると指摘。報道情報、制作スポーツなど各局に設けている番組アドバイザリーのチェック機能が働かなかったとした。

 関西、とりわけ大阪は、国会議員をはじめ自治体首長らが維新系で占められ、「維新王国」になっている。特定の政治勢力におもねるメディアの姿勢は、結果的に政党の広報機関の役割を果たすことになり、ゆがんだ世論形成をすることになりかねない。

拡大Photo Kozyr/shutterstock.com

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筆者

徳山喜雄

徳山喜雄(とくやま・よしお) ジャーナリスト、立正大学教授(ジャーナリズム論、写真論)

1958年大阪生まれ、関西大学法学部卒業。84年朝日新聞入社。写真部次長、アエラ・フォト・ディレクター、ジャーナリスト学校主任研究員などを経て、2016年に退社。新聞社時代は、ベルリンの壁崩壊など一連の東欧革命やソ連邦解体、中国、北朝鮮など共産圏の取材が多かった。著書に『新聞の嘘を見抜く』(平凡社)、『「朝日新聞」問題』『安倍官邸と新聞』(いずれも集英社)、『原爆と写真』(御茶の水書房)、共著に『新聞と戦争』(朝日新聞出版)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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