国は上告せず早期解決を! 東京高裁でも優生保護法強制不妊手術に賠償判決
高齢の原告25名のうち4名は死亡、残りの人生を穏やかに過ごせる国に
藤木和子 弁護士・優生保護法被害弁護団
だましてもいい、件数を増やせ~国策で拡大した手術
優生保護法は、国策として、「不良の子孫の出生を防止する」という目的で、障害や疾患のある人から生殖能力を奪う強制不妊手術、妊娠中絶を定めた法律です。高校の保健体育の教科書では、「劣悪な遺伝を除去し、健全な社会を築くために優生保護法がある」と説明されていました(新編高等学校保健体育教授資料評価編、1969年)。
厚生省は、各都道府県に手術件数を増やせ、身体の拘束、麻酔の使用、欺罔(だまし)等の手段を用いることも許されるという通知を出しました。盲腸の手術だと言われた人もいます。
現場において手術等の対象にされる範囲は学業不振や素行不良の少年少女にも次第に拡大していきました。
「父親を恨んでいたが、国だったのか」~驚いた北さん
北さんは、幼くして母を亡くし、父が再婚して弟が生まれるなどの複雑な家庭環境で育ちました。そして反抗期による素行不良で児童施設に入所していた14歳の時、何も説明されないまま強制不妊手術を受けさせられました。就職後、結婚にも消極的で見合いなども断っていましたが、知人のすすめで結婚。妻も子どもができないことで辛い思いをしていましたが、手術のことは妻が病気で亡くなる直前まで打ち明けられませんでした。
その後、手術から60年以上経った2018年1月、裁判のことを報道で知った北さんは、自分に行われた手術は優生保護法という法律に基づいた国策だったと知りました。「父親が手術をさせたと恨んでいたが、国だったのか」と驚くとともに
・・・
ログインして読む
(残り:約2612文字/本文:約4504文字)