ワーケーション最前線《上》コロナ禍で進化する働き方。仕事はリゾートの絶景に囲まれて
【15】人々の力を引き出し、地域も企業も元気にする旅のイノベーション
沓掛博光 旅行ジャーナリスト

緑に包まれた蓼科高原の宿の庭でのワーケーション。美しい自然の中で仕事ができる(立科worktrip提供)
コロナ禍で普及したテレワーク、さらにすすめたワーケーション
政府は新型コロナウイルス対応の「まん延防止等重点措置」について、21日の期限で全面解除することを決めた。しかし、連日5万人規模の新規感染者が確認され病床使用率は高水準のままで、コロナとの厳しい戦いは続く。そんな中で、在宅勤務などリモートで仕事をされている方も多いのではないだろうか。
東京都の1月の調査では、テレワーク実施率は全体で57.3%、従業員300人以上の企業(60社)では78.3%だった。IT環境が整えられ、職場でなくても仕事が可能になったことも大いに影響している。コロナ禍にあってのニューノーマルの1つかも知れない。
このリモートワークをさらに進めた「ワーケーション」が最近、注目を集めている。ワーク(work)とヴァケーション(vacation)を合わせた造語で、「職場や居住地を離れた地域での仕事と余暇の組み合わせ」と広く解釈されている。しかし、取材を進めると、解釈はこれにとどまらず、活用は多様であることがわかった。企業も地域も元気にするワーケーションは“イノベーションツーリズム”とも言える。その現状とこれからを報告する。
「ワーケーション最前線《下》仕事と旅が融合した新しいライフスタイルの登場」はこちら。
活用は多種多彩、7タイプの解釈も
ワーケーションとは、workとvacationが組み合わせた言葉と紹介したが、活用のされ方は様々である。観光庁は、実施形態から、福祉厚生型、地域課題解決型、合宿型、サテライトオフィス型と4つのタイプに分けて紹介している。
また、2020年に設立された一般社団法人日本ワーケーション協会は、7タイプに分けている。workの後に続くcationの前につく接辞部分にいくつかの意味を持たせているのだ。例えばeducationやcommunicationなどで、前者は研修型ワーケーション、後者は会議型といった具合にワーケーションに7つの解釈を持たせ、実際の活用では単独または組み合わせて実施されている。
国立公園の大自然に囲まれたテラスで仕事
まずは一番ポプュラーな「vacation」による活用を紹介していこう。
全国35か所で宿泊施設を展開する一般財団法人休暇村協会は、現在、8か所(裏磐梯、那須、妙高、嬬恋鹿沢、南伊豆、蒜山高原、瀬戸内東予、指宿)の休暇村にワーケーションの宿泊プランを取り入れている。「国立公園や国定公園など大自然のリゾートに立地していますので、コロナ禍、コロナ後にかかわらず、遊びだけでなく仕事の場所としても最適です」(阿久津久美子・同協会営業企画部次長)という。
各施設には、屋外でも仕事ができるよう椅子やテーブルを備えたリゾワテラスを設けている。テラスからは緑の園地や青々とした海など豊かな自然が一望でき、オフィスで人に囲まれて仕事するのとは、趣が大分違う。鳥のさえずりや風の音も心地よく、気分転換をしながら仕事ができるのが魅力である。