インスタで教材配信も開始。正しい知識を広げ、女性が生き生き活躍できる社会に
2022年03月21日
「1252」と書いて、「イチニーゴーニー」と読む。数字を見て、ピンと来る人は多くないはずだ。女性は、1年間52週のうち約12週月経(生理)と向き合わなくてはならない。それを分かりやすく数字にしたものだ。
「1252プロジェクト」は、学生アスリートを支援する一般社団法人「スポーツを止めるな」(野澤武史代表理事)と東大医学部付属病院が連携し、タブー視されがちな女性特有の問題や悩みにオンライン教材で答える。3月10日、教材の配信を発表する会見が行われた。
オンライン会見には、同法人の共同代表理事でラグビー元日本代表の主将、廣瀬俊朗氏も出席し、こうあいさつをした。
「私にも娘がいて、そろそろなのかな、とか、もし来たらどうしよう、などと考えます。このプロジェクトで自分も正しい知識を学びたい」
月経と女性スポーツについては、多くのトップアスリートや専門家も積極的に情報を発信できる時代になった。より深く、専門的な知識を共有できるようになった反面、それは女性だけの話として範囲が限られ、指導者やトレーナーらサポートする男性を巻き込むオープンな活動には発展しにくい面もあった。
女性の体について語る会見で、男性が、父親としての率直な思いを口にし、男性記者も参加し質問をする。誰もが触れやすいオンラン教材「1252プレーブック」を利用する新しさと同時に、「女性だけの問題ではない」と、新たなメッセージも強く示しているように見えた。
「私たちの現役時代は、月経について話すものではない、まして誰かに相談するなんて という雰囲気でした。仮に相談しようと考えても、コーチ陣は男性ばかりで難しかった。こうした経験から、まず、相談しやすい環境を作ってあげたいと考え、プロジェクトをスタートさせました」
そう振り返る自身、仲間や先輩との会話で情報は得られたが、女性同士であっても分からない部分はあったという。個人差が大きいのに比較したり、不正確な情報によって、体調よりも心に不安を抱え、それがパフォーマンスを低下させる苦い経験も味わった。
「あの人に比べて私は軽いとか、大丈夫かもしれない、とか、反対に自分は軽いからほかの人も同じに大丈夫、と自分で判断するのはいいことではありません」と、正しい知識を持つ重要性を説く。
オンラン教材「1252プレーブック」には、現場で吸い上げられた、学生選手たちの等身大の姿が反映されている。
「運動部女子学生におけるスポーツ×月経実態調査結果」(出典:1252プロジェクト 運動部所属女子学生へのアンケート=2021年)によれば、運動部所属の女子選手のうち(約600人回答)、「運動するうえで月経に悩みを抱えている」と回答したのは42.4%にのぼった。「月経周期とスポーツにおける身体のコンディションの関連」では67.5%もの選手たちが「関連する」と、月経が競技に与える影響を自覚する。
その一方で、「特別な対策はしていない」が63.4%で、「相談しない・できる相手がいない」の回答も27.9%と約3割に。相談相手は「母親」が53.6%で、医療機関の専門家への相談はわずかに3%。
問題や悩みを抱え、自覚症状もありながら、積極的な改善策はとっていない。様々な情報が気軽に手に入る時代にもかかわらず、昔ながらの「生理は我慢」と、耐えている実態、課題が浮き彫りになった。
連携する東大医学部付属病院の能瀬さやか医師(女性アスリート外来)は、「専門医に相談を、といっても、ハードルは高いと思います。その一歩手前にあるオンライン教材に気軽に触れることで、親御さんや指導者、一緒にスポーツをする人々が先ず正しい知識持てれば、環境の変化にもつながります」と、今回のプロジェクトが、誰にも分かりやすい内容で、インスタグラムでアクセスできる意義を説明する。
現場での対面講習会にも同行する最上紘太・共同代表理事によれば、講習会には男子学生も同席する場合もあるそうだ。生理について話す機会は、ジェンダー教育の側面も持っているのだろう。
スポーツだけではなく、職場でも家庭でも、女性が問題を抱えながら我慢する状況は似ている。「男性にも知ってもらう機会があれば、例えば生理休暇をもっと気軽に取ってもらえるかもしれない」と伊藤さんも話す。スポーツをきっかけに、女性が生き生きと働ける環境整備が進むために、部活支援に限らず、教育、企業研修にも教材の活用を想定する。
「1252」には、社会の変化への願いも込められている。
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